ナディーカ語り(10)-1
ルリア・ミアヘレナは、ちらとジェニーが置いていったそれに目を見やったが、平然と嘯いた。
「――さあな‥‥。あの頃のことはもう忘れた。エクス‥‥なんとかという言葉をどこで覚えたのかは知らないが、お嬢さんもご存知の通り、あの闘いは、われわれ抵抗軍――トゥーロパ解放戦線の負けだった。敗北で得るべきは教訓のみ‥‥。そして、あまりにも多くに犠牲と損害を強いた。あの日々についてのわたしの感慨は、悔恨に彩られた慙愧だけだ‥‥」
その気取った、ふてぶてしい態度といい、わたしへの侮蔑といい、わたしの内面の怒りの火を点すのに充分だった。だがわたしは、努めて冷静さを保った。
「ジェニーが聞いたら、さぞ淋しがるでしょうね。そうやって人を見下した態度‥‥。あの人のあなたへの憎悪、執着は、あなたが思う以上ですよ? わたしの条件を飲んで、部下になったほうがよくなくて? このまま奴隷になったら――まあわたしは、止めてみますけれど――ジェニーはあなたに、どんな仕打ちをするか知れませんことよ?」
「‥‥‥‥」
「いいこと? いまやっているような、カラダのみだらさを引き出すことでお互いの関係性を深めるための儀式、ではないの。ジェニーは、冷酷な軍人。単なる性拷問になることでしょうよ。――いいこと? いま、この星ではね、軍と情報省に、内務省までもが、あなたの身柄を舌なめずりして欲しがってるわ。人気者ね‥‥。取り合いっこの管轄争いの愚は、みな承知してますから、それを避けるために、王室が、ジェニーをあなたに当たる彼らの代表として指名する、というのは、誰に聞いても順当な線でしょうね。――まあ、賢明なナディーカとしては、あまり乱暴な真似は避けたいのですが、彼らにも面子というものがありますからね‥‥。おおお、
この女とて、そのようにして陵辱されることは、恐ろしいはずだ。本音を言えば、わたしは、特に内務省が絡んでくるのは面白くない。産業省と同様、自分たちの既得権益ばかりを主張する、旧弊にとらわれた官僚たちの巣窟なのだ。それどころか、こともあろうに――。
(なにか、わたしのジェニーを使おうとしている、おかしな動きもあるし‥‥。わたしが気づいてないと思ったら、大間違いよ――‥‥)
「それにね‥‥。いまは、わたしの力で抑えておいてあげてるけど、法的にもね、あなたは東イシドラ連続爆破事件の、じゅうぅ〜よぉー‥‥な参考人なのよ? スガーニーの検察を、司法を、甘く見ないでもらいたいわね。わたしの権限でも、そこへの介入には限度があるわ。――あなたがたの田舎星ではどうだか知らないけど、この国にはね、王位とて従わなくてはならない法があるの。それが、スガーニーなのよ。おわかりいただけるかしら? よぅーく、考えてちょうだい」
わたしは勝利を確信して、余裕を持っていた。しかし、彼女の返答は、しばらく経ってからの、
「ふん‥‥。断る」
という、憐みをわたしに見せる態度での、冷たい拒絶だった。そしてさらに、
「イシドラでの
「――国際法というものがあるのは、ご存知でしょう? 先に手を出したのは、あなたがた‥‥。何か違って?」
「先に、か‥‥。――これを、法廷で言ってやる。木星圏中に流すといい‥‥。“ベルタ”はどうなるのだと‥‥。長い歴史でも戦火に巻き込まれず、法的にも不可侵だったあそこに、戦を持ち込んだのはどちらなのかと‥‥な」
「くっ!」
痛いところを突かれ、わたしは逆上した。まだコンジャンクション中であることを忘れて、彼女のこれでもかという超乳をむんずと摑み、わたしの握力で可能な限り揉みにじってやった。
「はぐっ‥‥。はあああああっ!」
そして、大きな鳴き声を上げる彼女の大股開きの局所に、さらに特大のバイブレーターを乱暴に突っ込んでやったのだった。
(かつてはイシドラの戦鬼、
(一二七センチというあのPカップには、一体ぜんたい、何が詰まっているのだろう‥‥)
(胸乳もスゴイけど、あの、背の割にはほっそりしていて、なおかつ筋肉質なあの脚線美‥‥。女らしく、しかもパワフルそうなあの肉体‥‥)
(そんなあの
いろいろ思いをめぐらせる一方で、しかし、わたしはまた、行き詰まりを感じていた。ルリア・ミアヘレナは、たしかに体を攻められれば嬌声とともに大きく悶えるのだが、隙を見出しにくかった。
(何故、うまくゆかないのだろう‥‥)
あのときと同じくジェニーが所用で出てゆく背中を見送りつつ、わたしは思案に入っていた。リリィへの黒ボンデージでの責めを思い起こして‥‥。黒トングでの乳責めの後、彼女に取り付けた二種の器具を――。まず、乳送器‥‥。
乳送器というのは、このわたし肝いりの装置だ。まず、双乳それぞれの乳丘の根元、その円周に、特殊な素材のリングをかける。起動させると、黒いリングが円周の大きさをすぼめつつ、乳肉を搾り根元方向へ送り出しながら乳輪方向へ進み、最後はその乳輪をもきっちりと絞り込みつつ敏感な蕾にまで達するというものだった。その