ナディーカ語り(9)-1
「‥‥部下?」
「そう、部下。奴隷ではなく、ナディーカ・クセルクセスの護衛隊員として。ナディーカとて軍の面子も立てなければなりませんから、すぐに将校というわけにはいかないと思うけれど、いずれは可能と思うわ」
ふたりきりの部屋だ。誰にも憚ることはない。ジェニーに言ったのは、わたしが見てみたいと思うモノだ‥‥。姉妹のカラダを繋げる。それは、わたしが思い描いていることの、ひとつだ。すでに、そのための特別な下着――装置も、ザヴォーズに作らせている。コンジャンクションに使う予定はなく、出来上がってはいないが、わたしの予想より早く、もう少しで完成の見込みとのことだった。さすがザヴォーズだ。騎士甲冑と同様、ジェニーを介してはいない。
(もっとも、介させても、あの人は気づかないかもしれないけど‥‥)
これは何なのかと首をひねりながら、自分と自分の姉を合体させる装置のオーダーをザヴォーズに出しているジェニーの姿が浮かび、わたしは、まだわたしに従わぬ者の前だということも忘れ、思わずくすくすと笑ってしまった。
――目の前の、その従わぬ女が、妙な顔で何か言いたそうにわたしを見ていた‥‥。
わたしは、気を引き締めた。とにかく、手順を間違えなければ、ジェニーとその姉であるあのジャニスというメイド。そして、このルリアとわたしのリリィ。プラスケットに、ミアヘレナ。素敵な二姉妹が、もうすぐ手に入るのだ。わたしは、いろいろなことを思い描いてワクワクしながらも、油断なく目の前の女に言った。
「ナディーカは、木星圏全体の利益を考えているの。ジェスガーニーメデだけでなく、ね‥‥」
女は黙っていた。わたしは続けた。
「少し、歴史の授業をしましょうか‥‥」
彼女は、ん?という顔つきになった。わたしは腰に手の甲を当て、あらためて彼女に尋ねた。
「わかる人だけ、お股をおおーきく広げて答えてくださぁい‥‥。――ハイ、ルリア・ミアヘレナさん‥‥!」
わたしは、教師役になりきり、指で彼女の股間を指さした。
「‥‥‥‥」
「質問の前から、凄いですねぇ‥‥。わからなかったらお仕置きですよ? ――歴史時代の『独立戦争』、あれは本当は‥‥その当時は、何と呼ばれていたかしら?」
わたしは、翡翠の姫。生ける宝玉。スガーニーを統べ、この遅滞する木星圏文明を、光輝の未来へと導く使命を負っている‥‥――オイオの女戦士は、さほど待たせず、わたしの問いに答えた。
「『辺獄内戦』‥‥です、先生」
わたしは思わず、口笛を吹いていた。
「‥‥正解です。さすがオイオ軍の指導にあたるだけあって、おっぱいが立派なだけではないようですね。先生、感心しました。――拍手してあげなくちゃいけないかな?」
そう言ってわたしは、ルリアに近づくと、拍手の代わりに、その左乳房の蕾をピン!と指で強く弾いてやった。
「うっ‥‥くぅん‥‥」
ルリア・ミアヘレナは一瞬顔をしかめたもの、すぐにそそる表情を見せる。そして、がっちりと拘束されているにもかかわらず、そのPカップ爆乳は、ぷるん、ぷる‥‥と揺れる。あまりの大きさゆえに、カラダは動けなくても、このような反応を見せるのだ。
(やるじゃない‥‥)
オイオの
(悪いけど、結果はわたしがいただくけどね。全部‥‥)
わたしは、心のなかで舌なめずりした。あるいは、顔に出てしまったかもしれない。
「
しかし、歴史的事実としては、そうなのだ。現在に残る
「黒瑪瑙ルリア‥‥。このナディーカ・クセルクセスが、あらためてお頼みします。ナディーカの片腕となり、政務を助けてくれませんこと?」
わたしは白いスカートを両手に持ち、うやうやしく頭を下げてさえ見せた。
「ジェニー‥‥あのジェニファー・プラスケットは、戦のほうは大したものなのですが、残念ながらここのほうがちょっと‥‥。――スガーニーのナディーカは常に、有能な部下を欲しているのです。ナディーカは――いえ、スガーニーは、出身は問いませんよ?」
だが、わたしの最大級の
「――己の部下をそう申されるような方には、このルリア・ミアヘレナ、忠誠を尽くす気にはなれませぬ‥‥」
と、冷たい表情でのたまうでないの!
「その‥‥さきほどの修行生活とやらで、なにやら高邁な、禁欲の悟りでも開いたのかしら?」
わたしは皮肉たっぷりに言ったが、ルリアは、素直にその日々を思い出したかのようだった。
「‥‥――狭い寝所以外、火山灰まじりの砂が入り込んでくるような、気密さえまともに
「まるで歴史時代の英雄のような、ご大層な口ぶりね。それが悟りだ――と、そう言いたいわけ?」
「そんな不遜なことは、わたしは思っていない‥‥」
淡々とした、それでいてどこか
「ジェニーとは、懐かしくなくって? その