勘弁してよ-4
「昼間、昨夜の映像を見たんだけど」
そう前置きした里枝は、ソファーにストンと座り、小さく首を横に振った。
それに合わせるように、俺もクリアファイルをテーブルの上に置く。
「もう、ダメダメ。画面はユラユラ揺れて酔ってきそうだし、身体とか顔が切れたりしてるし。……極めつけは、私の顔よ!」
「は?」
「お風呂上がりでお化粧してないからとはいえ、あのすっぴんのブス加減にドン引きした。輝くん、今までよく私を抱けてたよね」
「え? え?」
よくわからないが、ハメ撮り動画を観たことにより、セックスの最中の自分の醜さが気に入らなくて、俺に観られる前にそれを消したんだとか。
そんなの、俺にとっちゃ寝耳に水状態だ。
確かに里枝は化粧映えのする顔だから、すっぴんになった時はボヤけた印象になるけど、だからといってそれを醜いなんて思ったことなんてない。
だから、里枝を抱くんだし、すっぴんだって幼く感じてとてもいとおしいし。
でも、隣の里枝はプウッと頬を膨らませて不満げだ。
里枝が映像を消した本当の理由は、そんな些細なことなんだと思うと、一気に脱力だ。
気にしなくていいことを気にして、手が焼ける。
俺は、小さい子どもを宥めるように、彼女の身体をそっと抱き締めた。
「里枝? 俺はお前のすっぴん好きだよ」
「……でも」
「いいんだよ、お前はお前のままで。俺が可愛いって思うから抱きたいんだし、そんなありのままの姿を俺しか見れないことがとても嬉しいんだ」
「でも、エッチしてる時の私、本当にブサイクだった……」
「俺はブサイクって思ったことないけどね。感じてる里枝の顔は、めっちゃエロくてすげえ興奮するんだけど」
里枝が苦しそうに歪める顔も、俺が感じさせてると思うと、もっともっと歪めたくなる。
そう、化粧っ気もなくとも、伏し目がちになった睫毛を見てるだけで――。
そっとおでことおでこをくっ付けた俺は、精一杯の愛を込めて口を開いた。