愛のあるフェラチオ-6
「アルバイト? へえ、毎月30万も仕送りあるのに?」
「そう、社会勉強がしたいんだとか言っちゃって。学校の近くのカフェでバイトするらしいよ」
午後から出かけて行ったユウと入れ替わりに、奈美が実家から送られてきたという大量の野菜や米を持って部屋にきた。
一人暮らしだからこんなには食べられない、といくら言っても『きちんと栄養がとれるように』と送りつけてくるのだそうだ。
素敵な親だな。
少しだけ羨ましくなる。
こうして奈美から食料のおすそ分けをもらうたび、なんとなく桃子の部屋で飲みながらおしゃべりをするのが入学以来の習慣になっていた。
「ていうか、なんでカフェなの? もっとワリのいい家庭教師とか塾講師とか、なんでも出来そうじゃない。まあ、桃子みたいなバイトはやめといたほうがいいと思うけど」
「……わたしのことは関係ないでしょ? なんかね、僕は受験産業には関わりたくないんだ、とか言ってた。自分が辛い思いばっかりしてたから、嫌なのかも」
「あー、なるほどね。あの子の学歴なら四年やそこらハンデがあっても、バイトだけじゃなくて就職だって選び放題じゃない? うらやましいなあ」
缶チューハイを片手に窓の外を見ながら、奈美がどこか寂しげにため息をつく。
部屋の中からでも、外の日差しの強さが感じられた。
「昼間っからこんなもの飲んで遊んでられるのって学生の特権だよね。でも、もうすぐ終わっちゃうなんて信じられない」
「うん。たしかに卒業して就職しちゃったら、こんなことやってられないんだろうな」
大学での三年間は驚くほど早く過ぎ去った。
残りはもう一年足らずしかない。
そんなにハイレベルなことを求められる学校でもないから、卒業するのはたやすい。
問題はその先だ。
「桃子は地元に帰るの? それとも、東京で仕事探してる?」
「んー、どっちでもいいかな」