『京助』-1
久しぶりに街に出掛けた……目的は無い……ただ、何となく……
久しぶりの街の喧騒に、眩暈のする思い……駅舎の壁にモタレ掛かり、缶コーヒーを片手に、人の流れを……ただ、ボンヤリと眺めていると……
「待ち合わせなの?」
一人の男が、声を掛けてきた……好みのタイプでは無い……
『…………』
私は、無言で首を横に振った……
「じゃあ、カラオケでも行かない?」
『…………』
「食事は?」
『…………』
「映画は?」
屈託の無い笑顔で、話し続ける男……
『…………』
私も、無言で首を横に振り続ける……
「ドライブは?……あっ、俺 車持ってないや……」
プッと、私が吹き出すと……
「やっと、笑った……じゃあ、ホテルでも行こうかぁ……」
笑いながら、私の手から缶コーヒーを取り上げ、駅舎の石造りの窓枠に置くと……私の手を握り、街中に向かい歩き始めた……
『何処行くの?……』
……別に、ナンパされに来たんじゃないんだけど……
「だから……ホ・テ・ル……ハハハッ……」
男は、高笑いをしながら街中を歩き続けた……
メインストリートを南北に貫く細い路地、北向きに歩を進めると怪しげなネオンが瞬いていた……
……本当に、この人……ホテルに連れ込む気?……
御影石で彩られたホテルの前で立ち止まる……
「此処にしようか……」
『えっ?本当に入るの?……』
「嫌?」
『……だって……』
私が話し終わる前に……男は私の手を引いて……
……別に、淫乱な訳じゃない……さっき会ったばかりの人と……ホテルに入るなんて、勿論初めて……
こんな事を望んで出掛けて来た訳じゃない……別に、好みタイプでも無いのに……鼓動は破裂しそうな位、高まり……でも、不思議と嫌な感じはしなかった……
頭の中を色々な思いが過り、真っ白になる……
気が付くと……男と私はホテルの一室で……唇を重ね合わせていた……
黒いダウンが、私から剥がれ落ち……白いシーツの敷かれた大きなベットに、静かに横たえられる……
男は、趣味の悪いジャンパーと、白いシャツを脱ぎ……適度に鍛えられた上半身が剥き出しになる……
男は、私の上に覆いかぶさり……再び唇が、近付いてきた……
『まっ、待って……名前……』
「ゴメン……お互い、名前も教えてなかったよね……俺、京助……古くさい名前だろ……で、君は?」
『京助かぁ……良い名前だね……私は、カオル……あの……別に……ナンパされ様と思って、あそこに居た訳じゃないの……それに、こんな風に知らない人と、こんな所に……』
京助は、私の言葉を遮る様に……唇を重ね合わせてきた……
京助と私の舌が絡み合い……体の芯が熱くなる……
「そんな事……どおだって良いよ……俺だって、ナンパしてホテルに直行なんて、初めてだし……それに俺、頭悪いしさ……ただ、カオルちゃんと仲良くなりたいなって、思っただけだから……」
首筋を舐め回しながら、耳元で囁く京助……指先が、私のシャツとデニムを器用に剥がし取っていく……
小花模様の散りばめられたブラのホックが外され……私の乳房が、京助の目に晒されていた……
『ぁああん……』
いつしか私の口元から、甘い吐息が漏れ始める……
「カオルちゃんって……感じやすいのかな?」
乳首を舌先で転がしながら……私の顔を見上げる京助……