大目に見てよ-5
そして、そう思う根拠がもう一つ。
セックスの時の里枝の反応である。
セックスレスに陥った俺達だけど、それを乗り越えてからの彼女は、明らかにエロ度がアップしたような気がする。
女の性欲は30代がピークだと耳にしたことがあるけれど、レスを解消してからの里枝は何というか、そそるのだ。
視線だったり、声だったり、触れてくる手の動きだったり。
些細なことかもしれないけど、抱いているとやたら里枝が俺を求めているような、そんな反応である。
やはり30代になって、性欲旺盛になったのかなと漠然と思った所で、先程の再生回数一覧の件である。
点と点が繋がった気がして、今に至る。
エロ動画を観て、単にエロい気持ちが高ぶったのか、俺を喜ばせようと研究してるのかはわからないけれど。
里枝が夫婦生活に積極的になったのは事実なのだ。
「……ちょっと、聞いてんの?」
低い声につり上がった瞳。おっと、今は怒られているんだった。
けれど、そんなことを一旦考えてしまうと、その怒り顔すら扇情的に見えて、気付いたら俺は。
「ちょっ……!」
グイッと里枝の手首を掴んで自分の方へ引き寄せていた。
ぐらついた身体が俺の身体にのしかかる。
風呂上がりのフルーティーなシャンプーの香り。柔らかい手触りのパジャマ。
「輝くん、まだ話は終わってないのよ!」
俺を睨む瞳も、メイクを落として少しだけ目立つそばかすも、色みがなくなった小さな唇も。
確かに勅使川原えみるに比べたら、外見は見劣りするけれど、里枝には今まで重ねてきた年月による愛情がある。
あー、もう我慢できねえ。
睨んでくる顔ですら、俺を煽っているような気がして、次の瞬間、半ば強引に唇を重ねていた。