『同窓会』-2
「彩、二次会行くだろ?慎司達がカラオケ行こうって言うんだけど……」
『うん。いいよ。』
高校時代から行きつけのカラオケボックス……男女合わせて十人程が微酔い気分で騒いでいた……
『彩も歌いなよ……』
『私は……』
俯き気味に手を横に振る彩……カラオケに来てから表情は曇りがちであった……ソファーの端に座りサワーのグラスを、しきりに口に運んでいる……
みんなが楽しそうに熱唱するのは、最新のナンバーばかり……忙しく日々を過ごすうちに、何か凄く取り残された様な……言い様の無い疎外感に襲われていた……
「彩、どおした?気分でも悪いか?」
『もお、そろそろ……帰ろうかな……』
祐司の優しい言葉に、俯きながら答え、ソファーから立ち上がると……
「彩……大丈夫か?……」
彩の顔を真上から、心配そうに覗き込む祐司……
『ここ、何処?……私……』
ハンマーで殴り続けられている様な、ひどい頭痛がする……
「カラオケボックスで、倒れちゃって……タクシーで送ろうとしたんだけど……途中で、凄く気分が悪くなっちゃったみたいで……でもなっ、変なことしてないぞ……」
お調子者の祐司が、しどろもどろに話す中、彩が室内を見回すと……派手な壁紙に、大きなダブルベット、時代遅れのシャンデリアが天井で妖しげな光を放っていた……
『飲み過ぎちゃったんだね……ごめんね、迷惑掛けちゃって……』
ベットから上半身を起こしながら祐司に語り掛けると、何故だか涙が溢れてきた……
「だっ、だから変な事なんてしてないから……」
涙を流す彩に驚いた祐司が、必死に弁解している……
『…………』
彩は、首を横に振りながら、祐司にそっと凭れ掛かっていた……
オレンヂ色の薄暗い灯りの中で、彩と祐司の唇が重なり合っていた……
「彩っ……俺っ……俺っ……」
『…………』
互いの温もりを確かめる様に……きつく激しく抱き締め合う二人……
……別に家庭に不満がある訳ではない……優しい夫に、可愛い子供……でも……でも……
……高校の時、伝えられなかったこの想い……祐司の事を考えて眠れなかった日々……
彩の脳裏に沢山の想いが過っていた……