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かのかな
【コメディ 恋愛小説】

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かのかな 零日目-3

 ぐあ、思い出したら胃が、胃が……
 これが心的外傷後ストレス障害ってヤツなのか?
「お、お母さま。僕、もうワガママ言いませんから、そ、それだけは勘弁してください」
「なんでー? あんたたち、あんなに仲良かったじゃないのー」
 違う! それは断じて違うぞ!
 俺は被害者だ!
 香奈に遊ばれていただけなんだ!
 ここ3年ぐらい、会うこともなくなって、ようやく平穏な日々が訪れたと思っていたのに……
「いや、香奈だけは、ムリ……」
「なにをそんなに嫌がってるのか、良くわからないけど、もう香奈ちゃんに頼んじゃったし、快く引き受けてくれるって言ってくれたし」
「お願いです。断ってください、お母さま」
 この場で土下座しろって言うならするさ。
 香奈が来なくなるってんなら、裸踊りでもなんでもやってやる。
 プライド?
 そんなもん、あの悪夢の日々が来ないことを考えたら、いくらでも捨ててやるよ。
「うーん。でも、もうムリじゃない?」
 ピンポーン
 オフクロの言葉と同時にインターホンが鳴り響いた。
 俺は心臓が止まるかと思ったね。
 嫌な汗が全身から噴き出すのがわかった。
「あら、噂をすればってヤツかしらー?」
 どこか楽しそうに言って、オフクロは玄関へ向かう。
 逃げなきゃ!
 1秒でも早く、この家から逃げ出さなければ!
 でも、どこに?
「あーら、香奈ちゃん。いらっしゃい」
「叔母様、ご無沙汰しています」
 玄関のほうから聞こえてくる会話に俺の心臓は早鐘のように鳴った。
 足音が聞こえる。
 隠れなきゃ。香奈に見つかる前に隠れなきゃ。
 俺はせわしなく部屋の中を見回す。
 うを、こんな時にかぎって隠れられるような場所がない。
「香奈ちゃん、きたわよー」
 部屋の中で右往左往していると、オフクロが戻ってきた。
 その瞬間、俺は思ったね。
 絶望ってのは、こういう時に使う言葉なんだって……
 俺は恐る恐る振り向いた。
「誰?」
 そして、オフクロの横に立つ1人の恩納の人を見て、思わず疑問を口にしていた。
 部屋の入口に立つ女性は、かなりの美人だった。
 長く艶やかな黒い髪。
 白い肌。
 おしとやかそうな立ち振る舞い。
 抜群のスタイル。
 まるで、美しい人形のようだ。
「なーに言ってんの? やっぱり忘れてたんじゃない。香奈ちゃんでしょー」
 女性に見とれていると、オフクロがどこか呆れたように言った。
 はい?
 これが香奈?
 いやいやいや、俺の知ってる香奈はこんな美人じゃないし。
 なんて言うか、見た目からしてもっと男っぽいと言うか、ガサツな感じと言う
か……
 とにかく、こんな大和撫子みたいな感じじゃないって。
「久しぶりね。元気だった?」
 女性が言った。
 その声は、紛れもなく記憶の中にある香奈の声と同じだった。
「マジで、香奈?」
「そうよ。誰だと思ったの?」
 クスリと笑う香奈。
 うを、今ドキってしたよ。ドキって。
「マジで?」
 俺の間抜けな呟きが部屋に響いた。


 つづく! かもしれない?


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