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清心高校失笑日誌
【コメディ その他小説】

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清心高校失笑日誌-3

「そ、それは……」
「まさか……」
篠崎と加賀は、それを見て顔色を変えた。そんなはずはない、こんな物がどうして……。どうして役に立つと言うのか……!?
「「ペットボトルロケット!?」」
2人は、同時にそう叫んだ。教壇には、スポーツドリンクのボトルに羽根を付けたペットボトルロケットが、堂々と置かれている。中には、何やらドス黒い緑色の液体が、たっぷりつまっていた。
「これこそ、僕の史上最高の発明品となるであろう作品。その名も、虎炉津袈(ころっけ)ボンバー5!名前に特に意味はないが!」
……終わった……。

「や、やめてくれー!」
「どうか、もう一度チャンスをください!」
ペットボトルロケットを打ち上げるために屋上へ向かう途中『戦国武将の(中略)語る会』の面々の悲鳴が聞こえた。見ると、屈強なタフガイたちに捕まっている。
「あのタフガイたち、きっと『サムソン衆』だぜ」
加賀が、そう呟いた。
サムソン衆とは、生徒会執行部の下に置かれた、特殊な部隊だ。生徒会の下した命令を、力づくでも実行することを任務としている。おそらく、戦国武将(中略)会も、廃部にされたのだろう。
黒いビキニパンツのみを身に付けた、スキンヘッドのサムソン衆に担がれ、どこかへ連れ去られて行く。
「噂では、『サムソン衆』に捕まった人は徹底的に肉体改造されて、サムソン衆に入れられるらしいぞ」
「私たちも、きっとそうなるんですよね」
篠崎と加賀は、重い溜め息をはいた。
「心配無用! こいつで雨を降らせれば、何も問題ない」
虎炉津袈を手に、天垣は明るい声を出す。
「さあ行こう。屋上と言う名の、希望の発射台へ」
「……絶望だな」

屋上。曇天に向かって、ロケットは設置されている。あとは、空気を入れるだけだ。
「さぁ、加賀君。思う存分空気をいれてくれたまえ」
天垣は、ロケットから離れ、機動隊が装備するジェラルミンの盾に身を隠しながら、加賀に指示する。
天垣の後ろに篠崎と、敵の敗北の瞬間を見学しようと集まった、如月とサムソン衆が一緒に隠れていた。
「天垣、これの中身ってなんなんだ!」
「黙秘」
「危ない薬品が入ってるんだろ!」
「黙秘」
「薬品が体にかかったら、どうなるんだよ!」
「黙秘」
「お前、俺と科学部と、どっちが大切なんだよ!篠崎もだ!」
「加賀先輩のことは、忘れません」
「何事にも、犠牲は必要なんだよ」
とんでもない奴らだ。
「絶対に、俺はやらないからな!」
盾に向かって、加賀は、今にも噛みつかんという剣幕で怒鳴る。
「なんだ、男らしいのは見かけだけだな」
やれやれと言った感じで、天垣は溜め息をつく。
「てめぇ〜」
「仕方ない。これを使うか」
天垣は、ポケットから小さなリモコンを取り出す。ちょうど、手の平に収まる程度の大きさだ。
「全自動空気注入装置、面血(めんち)ダイナマイト6作動!ポチッとな」
リモコンのスイッチを入れると、ペットボトルロケットに繋がれた空気入れが、シュコシュコと動き、ロケットへ空気を入れる。
「あーまーがーきぃぃぃ!最初からこれを使え!」
加賀が、怒りを爆発させて天垣に詰め寄ろうとした、その時。
空気がいっぱいになったペットボトルロケットが、プシュンと音を立てて飛び出した。しかも、その翼が、たまたま加賀の制服のエリに引っ掛かる。
「うを!?」
天垣の発明したロケットは恐るべき出力を発揮し、彼の巨体をそのまま持ち上げてしまう。
「うをを!?」
そして加賀は、どうしようもないまま天へ登って行く。


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