発情期-1
〜発情期〜5-1
12月30日
社会人誰もが、楽しみにしている連休であろう。椿はサービス業の為、年末年始だというのに31、1日の2日間しか連休は許されない。
せっかくの2日間にもかかわらず、毎年決まって大晦日には、実家に帰ってしまう椿。
一方、蓮は、実家住みで帰省する必要のないバンドメンバーやらと、夜な夜な出歩き、特に実家に帰るって訳でもなかったのだ。
(…せっかく休みなのに、椿帰ったら俺1人じゃね?つか、あいつは俺と一緒いたいとかねぇーのか?)
「なー明日から休みだろ?実家帰んの?」
「そりゃね、毎年帰ってるし?」
「俺もたまには帰ろうかな?」
「そう?珍しー!!ぢゃお母さんにも言っておくね。明日一緒帰る?」
「おう!」
「ぢゃ、明日ちゃんと起きてよね!そんで運転頼む。そろそろ寝るけど、電気消し忘れないでよ?おやすみー。」
「はいはい。おやすみー。」
(…はぁ。なんかなー?あの日以来、何もねぇー。俺まだ19才だぜ?盛んな時期だっつの…)
椿はなかなか(姉)8:2(女)で姉の顔を崩さないのだ。
彼女になったのはいいが、もちろん外でデートという訳にもいかず、夜眠るまでの時間が2人の時間。
姉でもある椿に、喰いつき過ぎてもと多少自制してるつもりなのだ。
それでも蓮からキスをすることはあっても、椿からすることはない。
舌を絡めようとすると雰囲気を逸らされ、はぐらかされているのだ。
(…欲求不満…。一緒住んでんのに1人でして足りる訳ねぇーよ。)
お風呂上がりにショートパンツで太ももを晒し、目の前を歩かれても気にも止めなかったが、今は違うのだ。彼女なのだから。
一緒に生活していれば隙ができてしまうのもわからなくはない。
男心を理解していないのか…。
悶々とし、眠りにつく蓮。
…コンコン
「蓮入るよー!もう起きて!一緒に帰るんでしょー?」
「んー?」
「ほら早く起きろ!(ペシッ) 」
「痛っ!彼氏をそーゆー起こし方するかね?椿ちゃん?」
「え、あ、うんごめん///。朝ごはんあるから、向こうで待ってるね!」
そそくさとキッチンに向かう椿。
「・・・。ふぁーぁ。」
(赤くして逃げたな…かわいーけど。急に女の子になるんだもんな…。)
ここ数日、蓮の頭の中は椿のことばかりなのである。
「帰ってもどーせいつものだろ?」
「そうそう。コタツ入って、紅白とかお笑いとか観ながらそのまま寝ちゃうんだよね!」
外に出れば、どこにでもいる姉弟。
車を走らせ帰省したのだ。
「ただいまー!」
母「おかえり。珍しく2人で帰ってきたか!これからシンちゃんも来るみたいよ!椿よかったわね!」
椿「だから好きぢゃないってば!もう!」
母「はいはい!小さい時からベッタリの癖にね〜。蓮、今のうちにお酒とか重い物買ってきてちょーだい!」
蓮「帰ってきて速攻かよ!親父いねぇーの?」
母「たまにしか帰ってこないんだから手伝っておけ!!」
蓮「はいはーい…」
母「椿はおせちの仕込み手伝って!」
椿「うん。シン兄ちゃん何時頃来るの?」
そんな会話の途中で家に着くなり、1人買い出しに行くことになったのだ。
(…シン兄ちゃんか。従兄弟なのに、小せぇー時よく椿が“結婚するー。”とか騒いでたな。まー弟の俺も、大概人のこと言えねぇーけど…。)
一緒に帰省したはいいが、もちろんこの関係をバラす訳にはいかないのだ。
(…はぁ。早く連れて帰りてぇー。2人の家に。)