凪の夢-1
きっと、こんなにも誰かを心から望んだ事はなかった。
歳を重ね、それなりに恋愛もしてきたけれど、こんなにも身も心も相手を欲しがる事はなかった。
「マスター…、私、マスターの名前、まだ知らない」
ベッドの旁に座り、私の髪を撫でながら微笑んでいるマスターに視線を合わせると、
「僕の名前は…あきらです。太陽の陽の一文字であきら」
そう説明をして名前を教えてくれた。
「あきら…。山中先生と同じ名前だ」
憧れの先生と同じ名前に小さく驚いて、思わず笑みが漏れてしまった私に、陽さんは無言で小さく笑みを返してくれた。
「陽さん…」
覚えたてのその名前を呼んでみたら、
「なんだか照れ臭いですね」
気恥ずかしさを誤魔化すかのように僅かに俯いて、
「さあ、少し休みましょう」
陽さんは、私の頬をそっと撫でて眠るよう促した。
「一人じゃ眠れないよ…」
掛け布団の左側を捲りあげ、添い寝を促すと、
「ダメだよ…、添い寝だけで我慢出来るほど、僕は出来た大人じゃないから」
「出来た大人なんて求めてないよ…」
「でも…体が…」
「大丈夫だよ。もう目眩はすっかり治まってるし、きっと陽さんなら私を無茶に扱わないってわかってる 」
陽さんに両腕を伸ばしたら、
「…ズルいですね、貴女にそんな艶っぽい顔を向けられたら…」
ベッドの左側から、布団の中に入り、
「拒めるわけないじゃないか…」
頬を撫でながら、優しく唇を重ねられた。
体の底にそっと火が灯るような熱に包まれて、私は更にせがむように陽さんの唇を求めた。
私の上にそっと覆い被さり、舌を絡ませて互いの口内を感じ合うようなキス。
漏れて止まらない微かな甘い吐息が肌を撫でる心地よさを噛み締めながら、陽さんの短くてさらりとした黒髪を撫でると、お腹の奥が融けるように甘く疼いて止まない。
淡いピンクのシャツのボタンが、節の太く白い長い指で外されて、前みごろがはだけて薄紫のブラのみの素肌が陽さんに晒け出された。
痩せて小さくなってしまった胸を見られるのは少し抵抗があったけど、鎖骨や肩に唇を這わされると、そんな小さな抵抗なんて、あっという間に消え去ってしまった。
ブラが外されて、窮屈さから解放されると、
「あ…っ…」
両胸が陽さんの大きくて温かい手に包まれ、敏感な先端が生暖かく滑り動く舌で弄ばれる。それだけで甘い目眩がして、体が熱くなり軽く達してしまいそうになった。
「綾乃さん…」
譫言のように名前を呟かれると、お腹の奥が疼いて、下肢のショーツの中にとろみが溢れて止まなくなる。太股に陽さんの硬くはりつめたものの形を感じてゆっくり太股で撫でると、体が小さく跳ねて眉間に小さくしわを寄せて、陽さんは熱い息を漏らした。
そんな彼に呼応するかのように、はしたなくも私の中からは更にとろみが溢れ、愉悦がショーツを濡らしていった。