終章-1
【終章】
賑やかで楽しい2次会が終わり、オレ達は早々に帰宅の途に付いた。
夜の9時までに帰宅することが、保護者達との約束だったから、白石先生の立場を考えれば、これは絶対に守らなくてはならなかった。
帰路の異なるクラスメートとはその都度別れて、いつしか結衣と2人きりで手を繋いで歩いていた。
よっぽど嬉しかったのか、結衣の顔はあれからずっと緩んだままだ。オレのスマホから赤外線通信をした画像、ブライダルコーナーで撮った2人の花嫁花婿姿を時折見ては、ニヤニヤと嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「それ、撮ってよかっただろ」
「うん♪」
そして気分が高揚してくると、「きゃー」とはしゃいで、人目を憚らず抱きついてきた。
しかし、そんなことを繰り返していた結衣が、何故か急に立ち止まった。怪訝に思って結衣の顔を覗くと、ほんの今までとは違って、凄く辛そうな表情を浮かべていた。
「どうした?」
「ご、ごめんなさい」
結衣は今にも泣きそうな顔で謝った。
「一体何を謝ってるんだよ」
結衣の目が余りにも真剣だったので、少し心配になった。若しかして、早くに姉弟じゃないことを言わなかったオレのことが、歩いてる途中で突然嫌いになったとか…
「あ、あたし、嬉しくて自分のことしか考えてなかった…」
「どういうこと?」
「だって、だって裕樹くん、ショックじゃないの?あなた本当はお父さんとお母さんの子供じゃなかったんだよ」
「ああ、そのことか。全然大丈夫」
「うそっ、普通ショックを受けるでしょ!」
オレの答に結衣がショックを受けていた。
「じゃあ、結衣はオレと姉弟の方がよかったのか?」
「えっ…」
オレの問いかけに、結衣の思考が止まった。しかし、答えは速攻で出てきた。
「うんうん、従姉弟の方がいいに決まってる」
「そう言うこと。本当の親じゃないショックより、結衣と付き合える喜びの方が断然大きいよ。オレも戸籍を見た時は、廻りが全然見えなかったくらい嬉しかったんだよ」
「だよね。あたしも裕樹くんを好きになってから、自分が余所の子だったらいいのにって、ずっと思ってたもん」
「じゃあ解決だな」
「うふふ、解決だね」
オレは微笑む結衣の両肩を持ち、真剣な顔をして見つめた。
「手続きをどうやったらいいか今はわからないけど、いつかオレの籍を抜いて貰って、佐々木さんと真下みたいにみんなに祝って貰える結婚をしような」
結衣は驚いたように2,3度瞬きを繰り返したが、直ぐににっこりと満面の笑みを浮かべて応えてくれた。
「はい」
しっかりと肯く結衣を愛情たっぷり込めてぎゅっと抱きしめた。
「じゃあ、お祝いに今日はセックスしまくろう」
オレの言葉を受けた結衣に怖い顔して睨まれた。
「もう!裕樹くんたら、せっかくのプロポーズが台無しじゃないのよ!ホント、そればっかりなんだから」
「嫌なのか?」
オレの問いに結衣は、また満面の笑みで応えた。
「そんなわけ無いでしょ!今夜は朝まで裕樹くんとセックスしまくるぞ―!」
今日の結衣はかなりハイテンションだった。
「で、裕樹くん、今日は危険日だけど、お祝いだから生でする?」
その危険な誘惑に一瞬心がぐらついた。