黒い嫉妬-6
〜黒い嫉妬〜3-6
椿(…むかつく。)
蓮(…むかつく。)
仔犬のトーンで謝る蓮は知っているが、今の蓮は知らない。
(…そんな言い方しなくても、いいぢゃんか!隆二と会いたくて、会った訳でもあるまいし!)
怒りに満ちていても、嫌われるなら姉でいい。と夕飯の仕度に取りかかるのである。
その一方で蓮は不貞腐れているのだ。泣かすつもりではなかった…。
(…はぁ。完全に八つ当たりだな。)
行き場のない感情に苛まれる。
コンコン…
「……。」
「夕飯出来たから一緒食べよ?」
「……。」
(…ふん。そゆ態度するか。)
蓮は隆二のことを良く思っていないのは椿も心得ている。
引っ掛けるためにワザと嘘をつくのだ。
出てくれば素直に一緒に夕飯を食べるであろうと…。
「…もういーよ…わかった。隆二の所に行けばいんでしょ。出掛けるから勝手に食べてね。」
怒らず冷静に嘘をつく。
「……。」
(…ドタドタドタドタ…)
(…ほら来た!)
椿はしてやったりだ。満面の笑みで扉が開くのを待っている。
「!!!!!!!!」
扉が勢いよく開くなり、蓮は椿をもの凄い力で引き寄せ、抱きしめたのだ。
まるで、おもちゃを取られたくない子供のようである。
椿もそれが素直に嬉しく、抱きつく蓮に手を添えた。
「掛かったな!行くわけないでしょ!笑 ほら。ご飯食べよ?笑」
「//////。」
「え?一丁前に照れてる??」
先程キレていたばかりに蓮は、見事に形成逆転されたのである。
沈黙のあと、おもむろに口をひらいた。
「椿。俺ね、好きだよ…。」
「なにが…?」
キッチンに向かう足を止め振り向くと、あの時と同じ顔をしている。
微かに違うのは、どこか悲しそうな影があるから…。
モテる蓮にこんな顔をさせるのは椿だけであり、きっとそれは“姉と弟”で男と女になったからである。
ただの男と女なら、こうはならなかっただろう。
「えーっと…//」
「椿はきらい?」
(…反則の質問ぢゃん…)
「きらいって顔してないけど?」
蓮の言葉に決意が簡単に崩されかけてゆく。
「……ぐず。」
「なんで泣くんだよ?」
「だって…ダメでしょーが…」
我慢して…我慢した涙が溢れる。
「大丈夫だよ。」
「ぐす…ひっ…ひくっ…」
「全部俺のせいだろ。
だから椿は悪くねーよ。な?」
いつものように頭を撫で、椿の顔を覗き込む蓮。
「俺のこと好きだろ?」
「ちゃんと受け止めるから。だからもう泣きやめっ!」
(…ひくっひっひっ…ぐす…)
「ダメだなこりゃ!」
椿は蓮に頭をくしゃくしゃにされ、ボサボサだ。
それでもしっかり抱きしめてくれた蓮に力強くしがみつき、泣いている。
結局“形成逆転”とは、いかなかった椿であった…。
〜To be continued〜