黒い嫉妬-4
〜黒い嫉妬〜3-4
休日でもいつも決まった時間に目が覚めていた。こんなに長い時間、深い眠りについたのは、いつぶりだろうか。
泣き疲れそのまま眠りに落ちたのだ。
もちろん目元は真っ赤になっている。
この時間ではさすがに蓮も自室にいる。日が沈むまでは起きてこないであろう。
(…大丈夫。もう泣くだけ泣いた。普通に戻れば良いだけ。)
それを簡単にできる心境ではない。のは確かである。
(…とりあえず蓮が起きる前に気分転換しよう。)
職場で女同士ちょっとした話題になり、ずっと気になっていた脱毛サロンに寄り、カフェで大好きなホットココアを飲み、仲直りする為の夕飯の買い物をしているのだ。
ふと時間が気になり携帯を確認する。
(…え?隆二?)
あれから音沙汰の無かった隆二からのメール。
「元気?いきなりごめん。椿の家に俺のPcソフトあるでしょ?仕事で使うから取りに行っても大丈夫?」
(…あったかも?)
椿の頭の中は蓮に埋め尽くされ生活していた為、隆二の私物など気にも留めていない。
「外に出てて確認できないけど、そろそろ帰る。来れるの?」
「わかった。今日だと助かる。今から向かうわ!」
素っ気ないメールのやり取りをし、
時間を合わせ帰宅した。
「ちょっと部屋探してみるから、リビングで待ってて。」
無駄な会話もせずにバタバタと自室に入る椿。別れた彼氏を自室に入れない。椿なりの線引きである。
(…んーけっこう寝たな。リビングが騒がしい。椿いるぢゃん!)
ちゃんと謝った。あとは椿の許しを請うだけ。
家の中に隆二がいるとも知らず、寝起
きの目を擦り蓮はリビングへ向かったのだ。
「お邪魔してまーす。」
「!」
気まづそうに声をかける隆二。
蓮はここにいるはずのない人間に、嫌悪感を抑えきれなかった。
椿ではなく“隆二だから”である。
「何の用があってここ居んの?」
「私物をちょっと…。」
蓮の冷たい眼差しが向けられる。
「あっそ。」
(…苛々すんだよ。その無神経さが。)
蓮の素の姿に驚いている隆二だが、反省やら気にする人種ではない。
蓮は水を注ぎ飲み干すと、苛立ちを隠さず、自室へ戻った。
「あったよ!コレでしょ?はい!」
「助かった。今日蓮くん居るんだね。じゃ俺帰るわ!」
「それがどーかしたの?」
「いやー。さっきリビングきたよ。嫌われたかな…はは…。じゃ!ありがとう。」
そそくさと立ち去った。