黒い嫉妬-3
〜黒い嫉妬〜3-3
ガチャン…
(…?…帰ってきた?)
浅い眠りの中、蓮の気配に気づいた。寝床についてから何時間もたっていないであろう。
ライブの日にしてはかなり早い帰宅。
足音は迷わず真っ直ぐ椿の部屋の前で止まったのだ。
コンコン…
扉は開かずにいつもより低いトーンが響いた。
「ねーちゃん起きてる?」
起きようと思えば起きれる浅い眠り。寝返りをし迷っていた。
ギシ…
蓮はベッドの軋む音を聞き逃さなかった。
「…こないだはごめん。
無理して夜中に帰ってきてるだろ?
女がフラフラしてっと危ないから、ちゃんと帰ってこいよ。
もう触らないし、ちゃんと弟でいるから…。」
「……。」
(…ちがう。そうじゃない。)
今すぐ扉を開ければ、2度と姉ではいられない。涙は溢れ止まらず、呼吸が苦しい。気づかれぬよう布団で顔を覆い、こんなにも苦しい泣き方は知らない。
いつも泣いている時は決まって蓮に慰められ、頭を撫でられていたのだから。
「これからライブの打ち上げで、また出るから…。本当にごめん。いってくる。」
幼い時から決まって喧嘩をしても、先に泣かされるのは椿。
それでも必ず、最後に蓮が謝り、仲直りをしていた。
生意気な癖に肝心なところでいつも、捨てられた仔犬のように耳を下げ、このトーンで謝る蓮に弱かった…。
(…いやだ。ち…がぅ…。)
独り残され一晩中泣き眠りに落ちた。