黒い嫉妬-2
〜黒い嫉妬〜3-2
互いの感情を知らずに時間だけが流れ、すれ違い生活の姉弟。
先に帰宅したのは椿である。
ライブの日は打ち上げやら、蓮の帰りが遅いことを把握しているからだ。
おもむろに玄関の扉を開け、部屋の中を確認している。側から見れば挙動不審である。
(…やっぱりいないね。)
仕事も落ち着きを取り戻し、夜な夜な時間を潰して、帰宅する生活には無理がある。おかげで疲労感は倍。
一刻も早く身体を休めたいのだ。
「ふぅーーー。」
ここしばらく早めに起床しシャワーで済ませていたが、時間を気にせずバスタブに浸かり、お気に入りの入浴剤の香りに包まれ、ご満悦の様子。
(…蓮はあれからどんな様子なんだろ?ライブ上手くいってるのかな?)
思い返せば蓮のライブに行ったことがないのだ。ファンは女ばかり、カッコつけているのを見られるのが恥ずかしいのか、“来るな!”と念を押されている。
(…「ファンに手出さない主義だから。」か。ふーーん。彼女ができたら、同じように優しく触れるのか…あの視線を向けるのか…)
考えては自ら傷を抉る。
(…いやだ……。蓮に会いたい。)
(…顔を合わす勇気なんかないよ。)
涙ぐんだ顔にシャワーを浴びお風呂を済ませ、早めに寝床についた。