壁越しの感情-3
〜壁越しの感情〜2-3
pm10:30
仕事を終え電車に揺られる。
朝からバタバタと作業をこなし、あっという間に1日が終わりを迎えるのだ。
充実していると言えるが身体は正直だ。心地よい電車の揺れに居眠りをはじめる。
眠気にのみこまれ、家の中に入れば蓮がいる。どんな顔をするのか…されるのか…考える余裕がなかった。
「〜〜駅。〜〜駅。」
プシュー
眠たい目をこすり帰路につく。駅を出てしまえば自宅までほんの数分。
ガチャ…
ブーツを脱ぎ捨てリビングを通り過ぎ、自室に向かう。
「おかえりー!」
リビングから蓮の声がした。
「おい…?」
どんなテンションで返事をすれば良いのかわからず、何も言わず自室に入ってしまったのだ。
整理できずに頭が働かない。
鼓動だけが身体中から聞こえる…。
(…とりあえず今日はこのまま寝よう。お風呂は朝でいっか。)
朝まで自室から出ることはなかった。
(…聞こえてない訳ないよな?無視かよ…?)
この違和感に罪悪感と寂しさを感じた蓮。
それから2週間程、顔を合わさずに生活しているのである。
椿は仕事がピークになり忙しいのも事実だが、蓮と顔を合わさぬよう時間を見計らって帰宅しているからだ。
考えれば考える程わからなくなり、思い出すのは蓮の男の顔。
20才といってもまだまだ、経験も少ない未熟者であり、初めて絶頂に導いたそんな男を忘れることが難しい。
弟であるからこそ、良いも悪いも人間性を受け入れられる。
ただ男の部分は決して受け入れてはならないのだ。
あの日から、頭の中は蓮で埋め尽くされている。まるで恋でもしているかのように…
(…意外と筋肉あるんだなぁ。蓮の顔見たいよ…。)
姉としての概念を貫こうとするが、そんな当たり前のことが苦痛になっていた。感情が噛み合っていないからである。
隣は蓮の部屋。
顔を合わすのは簡単なことだ。
壁越しに蓮を感じる。いるのが当たり前なのだから…。
こんなに近くにいるのに遠い。
顔を合わせば姉でなくなってしまいそうで、怖くてたまらないのである。
感情をコントロールできるのか… 。
それでも、あの日を思い出し1人遊びをしてしまい、身体と思考が追いつかないのだ。
椿の1人遊びなんて可愛いもので、蕾だけをかわいがり、自ら奥深くをひらかせることはしない。
蓮の指先を思い重ね、真似てもソコには届かないのだ。
子宮が疼き鮮明に思い出せるのに、男性器で絶頂を憶えた身体は、満たされるはずがなかった。
それでも繰り返してしまう…。
(…蓮。どうしたらいいのか、わからないよ…)
〜To be continued〜