声に惹かれゆく-4
〜声に惹かれゆく〜4
(…はぁー。また泣くな…)
「女なんて演技するもんだろ。ねーちゃん、そんな奴と付き合うなよ!」
きっぱり言い放ち、ポンポンと頭を撫でた。椿は昔からこの「ポンポン」をされると落ち着きはじめる。
いつもなら、ここで決まった様に怒りがこみ上げるのか、愚痴を聞かされるのだが…
「ありがとう。ごめん…変なこと聞いて…。」
今になって質問した内容に恥じらいを見せはじめたのだ。
昨夜の甘い声を聞いてしまった後に、
そんな素振りをみせられるとは露知らず、
キューンと胸を締め付けられる様な感覚があった。
(…椿も女の子だな。かわいーぢゃん!…)
気づいた時には、チュッと触れるだけのキスをしてしまっていたのだ…。
「ご、ごめん!間違えた!」
慌てて訳の分からない事を口走り顔を逸らす蓮。
不意打ちのキスにポカーン!としていたが、すぐさま笑い出す。
「そんな慌てなくても…。怒ってないからいーよ!許す!おかげで泣く気も失せた!」
「う…。」
さすが姉は姉。
さっきまで赤くしていた癖に、今度は蓮が赤くしている…
「さーて!少しお酒でも付き合ってよ!」
「はいはい」
“…さすがに断れない…”
リビングのソファーでくつろぎお酒を交わす。
「あんま飲んで悪酔いすんなよ!椿どーせ弱いんだから。」
「ねーちゃんと呼べ!」
椿は気を紛らわす為に空腹のままお酒に酔い、未成年だがお酒の強い蓮も先程の動揺からか、いつもよりペースが速い。
たわいもない会話をしながら飲み始め1時間程たったか…
「蓮はさ彼女いないのにどーしてるの?もし、彼女がイカなかったら、やっぱり嫌?」
「それを弟に聞くか!?」
「弟じゃなきゃ他に恥ずかしくて聞ける訳ないぢゃん!」
「1人でした時はイケるの?したことある?」
椿の一人遊びを知らぬ振りをしてみたが、そんな質問返しがくると思わず焦っている椿がいた。
「しない。1人でする訳ないぢゃんか!!」
「…ふーん…」
慌てて否定をしている。蓮は男の顔をしていた。
「隆二くん下手なの?俺手抜きしないし、
イクかイカないかなんて、気持ちの問題だろ?
自分で聞いておいて恥ずかしがってんなよ!」
(…だから俺の前でそんな女の部分をみせんな…。)
いつもより速いペースで飲んだアルコールのせいか、昨夜の甘い声に惑わされたか、恥ずかしがっている椿を押し倒してしまったのだ。
「うわっ!びっくりさせないでよ!ほら、退いて。」
しかし弟でも男の力に敵うわけがない。
片手を押さえ込み蓮は顔を近づけた…
「椿が悪いんだよ!俺も男だよ?」
「ちょ…ちょっと!」
手を払いのけようとするが動けない…。
「彼女いない欲求不満の弟に、煽る様な話するからだろ。
俺がイカせてあげよーか?」
「嘘つき!!」
睨みつけ…どうにか抗議する。しかし、見たことのない蓮の雄の体勢に鼓動がうるさい…。
「俺ファンに手出さない主義だから。」
「や…やだ…。いーから離して!」
「ほらな?またそんな顔してさ…。」
どうにか抵抗しようとする椿を、口を塞いで黙らせた。
「んっふぁっ…いや…」
今さら引くつもりもない。
首筋に唇を這わせ、耳たぶを甘噛みし、舌の動いた卑猥な音を、鼓膜に届けてゆく。
ぷちゅ…ちゅ…
「蓮ってば、ダメだよぉ…いやだ。」
「やだってばぁ…。」
どんどん抵抗が弱くなっていることを見逃さなかった。
頑なに開こうとしない唇を舌先でなぞる。片手で手首を押さえこみ、太ももとお尻を撫でてゆく蓮。
「ま、待って…。」
その瞬間に舌を割り入れられ、歯の裏側を舐められたのだ。
ゾク…ゾクゾク…
今まで感じたことのない腰がそわそわした感覚。
押さえ込まれていた手が解放され、頭を撫でながら唇が離れてゆく。
「椿?大丈夫だから。舌出して。ね?」
強引なのに触れる指先、すべてが優しい…逃げようと思えば、逃げれたはずなのに…。
ん…ちゅ…ぷちゅ…
男の顔をした弟のキスで溶かされていく。