調教士として(6)-1
スガーニー到着の翌日‥‥。
朝から、ナディーカ姫さまの演説があった。部屋のモニタは消すことはできたが、ルリアが消させなかった。一方的なその演説を、ミドリは憤慨し、ルリアは腕を組んで黙って見ていた。
宿舎からの外出は自由だったが、あなたがたは、のんびりとレアンドラ見物をする気にはなれなかった。ここで最低限必要なのは、スガーニーの標準重力に慣れることくらい。あとはひたすら調教だ。ルリアは、気分転換に外に出てみないかとも言ったが、あなたたち三人の反対でその提案は取り下げた。そして‥‥。
「妹?」
その夜になって、あなたはさらに新たな事実を知ることになっていた。ミアヘレナ姉妹のことではない。あのジェニファーという手強そうな女軍人が――。
「妹なのです。わたしの‥‥。生き別れというほど大げさなものではないのですが、もうずっと前、フカリスで別れ、別々の道を歩むことにしたのです。ジェニファー・プラスケット‥‥」
ジャニスさん――ジャニス・プラスケット――は、複雑な
フカリス星。かつての名、古名は「ジェフカリスト(Jfcallisto)」。天体としての正式名称は、ジュピター・フォー・カリスト(Jupiter Four Callisto)。彼女がそこの出身だということは聞いていたが‥‥。
「ルリアさまとは違い、メイルのやりとりはしていたのですが‥‥。それも一年ほど前までで‥‥」
オイオとスガーニーとの関係悪化以降、向こうで出しにくくなったらしく、ぱったりと返事が来なくなった、とジャニスさんは嘆くのであった。
とはいっても、スガーニーの放送等で妹の姿は見られたから心配はないというのだが、
「わたし、さみしくて‥‥」
と、ジャニスさんは長い睫毛を伏せるのだった。ルリアが、そんなジャニスさんを気遣ってか、優しくその肩に手を置いていた。
「あの妹さんのためにも頑張ろう。コンジャンクションでおまえの女らしい、立派な姿を見れば、きっと彼女も、目が覚めるに違いない」
「はい‥‥」
この世界では、衛星間を渡り歩き、あるいは移住することは、普通に行なわれていた。衛星の重力が小さく、地球と比較して容易に宇宙空間へ飛びたてるからだろう。あなたは、オイオとこのスガーニーしか知らないわけだが、フカリス星にも行ってみたいと思った。ルリア出身の地というトゥーロパ星にも‥‥。そこにもやはり、古名があった。「ジェトゥーロパ(Jtwuropa)」。正式名称はジュピター・トゥー・エウロパ(Jupiter Two Europa)。
イオ(Io)、エウロパ(Europa)、カリスト(Callisto)、そしてガニメデ(Ganymede)。あなたはたまたま少し知識を持っていたが、木星の四大衛星としてあなたが生きる時代にも知られる衛星たちだった。
ここは、はるかな未来世界――。
彼女たちが、地球にいた頃のあなたも含む人類の子孫であることは間違いないようだったが、この木星圏に文明が築かれた経緯は、ネット等でいくら調べてもわからなかった(なんとなく、その部分は、各種資料に意図的にブロックがかけられているような気がした)。幾度も戦争があったようで、長い時間をかけてこのようになったのだろうと思われた。
繰り返すが、地球とは現在、音信不通のようだった。
ルリアによれば、この木星圏には圏外を航行する宇宙船の技術は無いはずなので、たとえあなたが行きたくても、地球訪問は無理なようだった。
「無いはず」というのは、オイオでは、またフカリス、トゥーロパでは不可能だが、軍事・経済の大国として成長しつつあるこのスガーニーならば‥‥ルリアがその豊かな胸の上で、難しい顔で腕組みして言うには、
「現在、わがほうが知りうる限りではそのような情報はない。が、あのナディーカ姫は野心家だ。もしかしたら、長期的にはそういった宇宙船の開発も視野に入れているかもしれん‥‥。あくまでも可能性の話だが‥‥」
ということだった。
それは、この世界においては途方もないことらしく、軍属として知識のあるらしいミドリは、その宇宙船を想像したのか息を飲み、あらためてスガーニーとナディーカ姫への敵愾心を燃やしていた。
そのような宇宙船があれば、それに搭乗することができれば、そして目的があれば、あなたが故郷の地球を間近におがめる日も、来るかもしれない。
だがそれは、もっと遠い
いまは、目の前のコンジャンクションに勝たねばならない。
そこで、悲しみを見せていたジャニスさんが、ぱんぱんと両手を叩き、健気に元気な声を出した。
「さあさあ、調教士さまに
と、おもむろにメイド服の胸を外す。一一〇センチを超えるNカップのやわらか爆双乳が、むにゅっとこぼれ出た。
「うんと可愛がってくださいな‥‥。あのリリアが(ジャニスさんはルリアのほうを窺った。ルリアは、黙って小さく頷いた)――どんな魅力的でも、決して気をやらぬよう、たっぷり味わってくださいませ」
ルリアも大きく頷き、ミドリに命じる。
「ドリー、おまえもだ。調教士殿を思い切り楽しませ、おまえもよく可愛がってもらって、カラダでその快楽を覚えるんだ。あちらの調教士にどんな責めを受けても、できるだけ感じないようにな」
「は、は、はい‥‥!」
ミドリもやおら改造軍服の胸を外し、真剣な顔で、やはり一一〇センチ超、Oカップの爆双乳を、あなたに差し出すようにぷるんと露出させた。
終了後の国璽の押印は、ルリアがやはり自分が担うと言い出した。ミドリは自分がやりますと泣いたが、ルリアは首を横に振るばかりだった。
あなたがこの世界にやって来た意義が、試されようとしていた。