ジェニファー語り(12)-1
「もちろんこのわたしと、ジェニー、あなたがやるのです」
「わた‥‥し――が?」
わたしは目を剥いた。コンジャンクションでの、あの三人の女体責めの話だった。姫は面白そうに、ふふふ、と笑った。
「そうです。あの几帳面な
「しかし、わたしたち‥‥いや、わたしはその――初めての体験で‥‥」
悪戯な目つきの姫を見上げながら、わたしは厳密には自分の言葉が正しくないことに気がついていた。姫の指示で、リリアの肉体調教に参加していた。あれは‥‥。
「ふふふ‥‥。明日から、楽しみましょ。思いきり‥‥ね?」
小首をかしげるナディーカさまは、まるで天使のように美しく微笑んでいた。そうだ。ナディーカさまは最初から、あるいは少なくとも途中から、こうするおつもりだったのだ。だからご自分も調教の現場に顔を出し、おそらくはリリアの
(あれは、「演習」だったのだ‥‥)
わたしは、わずかな戦慄を感じてもいた。
(まだお若いというのに、末恐ろしいお方だ。わたしはやはり、この方についてゆきたい――)
わたしは、言葉を継いだ。
「しかし‥‥わたしにはナディーカさまのような‥‥高尚なご趣味はありませ――いえ、だから嫌だと申しているのではなく、ゆえに戦力不足かと‥‥この一大事に差し障りがあってはと‥‥」
被調教側だけでなく、調教側の技術・様子も評価の対象になる。その点を拠り所に、無礼を承知でなおも抗弁するわたしに、ナディーカさまは切り札を出してきた。
「そうお? ナディーカは自信ありますわよ? いままであの男の手順をしっかり観察しておきましたから‥‥。あなたは、わたしの指示通りにしてくれればいいのです。それに‥‥あのルリア――‥‥。やはりあの女でしょう、今回の最大の獲物は‥‥。無論ナディーカも責めますが、お望みなら、あなたにも責めさせてあげます。たっぷりと、あの女のカラダを‥‥」
「‥‥‥‥」
わたしは、自分の心が動くのを感じた。復讐心。そう呼ばれるものが疼いていた。
「トゥーロパでの戦‥‥“ベルタ”‥‥――覚えているのでしょう? だったらジェニー――いえ、スガーニーの誇る歴戦の勇士――“北部中低空域の悪魔”ジェニファー・プラスケット、これは絶好の機会ではありませんか。あの女を吊るし、縛り、スガーニーの力に屈服したみじめな姿を、木星圏中に晒してやるです。あの大きなおっぱい――魔乳を、これでもかと嬲り、弄び、あの高潔ぶった顔を歪ませ、快楽の喘ぎ声をあげさせてやるのです‥‥。楽しみでなくって?」
「‥‥やりま――いえ、やらせていただきます‥‥!」
「まあ、いい目ね。頼もしいこと‥‥。幾多の戦場で魔女、戦の権化と恐れられたあなたの、これは新たなステップだと思ってくださいな。将軍への推挙の準備はしておきましたし、国防相の話も、わたし、本気なのよ。――お望みなら、新しいペットちゃんたちをあなたにも弄らせてあげる‥‥。そんな顔しないで。おすましのリリィと違って、あなたにも可愛がり甲斐があるかもしれませんよ? ふたりでアグラウラの王宮に、みだらな花を咲かせましょう。
ナディーカさまがあらかじめ呼びつけておいたらしく、リリアがやって来た。すでに液体の飲み薬――あるいはもっと強力なものか――を飲んだのか、そのカラダの感度は極めて高かった。
姫の命令で、わたしも乳房を揉むよう、命ぜられたのだ。わたしは固辞し、姫におべんちゃらを並べて彼女に責めさせようとしたのだが、姫の姿勢は強固で、わたしも従わざるを得なかった。
しかし、いわゆる性のテクニックなどまるでない、朴念仁のわたしが慣れない手つきで恐る恐る触っても、リリアの美麗な乳房は、驚くほど敏感に反応した。
「し、縛ってください――。わたしを‥‥」
リリアはわたしに――義務でなかばいやいややっているわたしにまで――切なげな目で懇願する。これには応えねば、と思わせる訴求力だ。リリア――“ザ・パーフェクト”のゆえが、女の、しかも鈍いわたしにさえ、理解できるような気がした。
(コツは、これで多少なりともつかめるだろうか――)
わたしは姫のご指示を仰ぎながら、午後いっぱい、慣れない手つきをリリアのカラダにぶつける形で、女体責めの演習に従事したのだった。今夜は、あの男を帰還させる一連の作業。そして明日はまた、たっぷり演習だ。
わたしは軍人だ。如何なる試練が待ち受けていたとしても、最善を尽くすことだろう。