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衛星和誌 −Qカップ姉妹−
【SF 官能小説】

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ジェニファー語り(8)-1

 リリアの調教は順調で、あの男は自信満々になっていった。リリアは首輪をつけられ、姫の手のリードに繋がれて、王宮内を全裸で四つん這いで散歩させられることもあった。それはわたしは見ていていい気持ちはしなかったが、取り外し式の彫刻入りの「壁」に、顔と胴体の前面のみを出して彫像か立体の絵画のように埋め込まれる、ということをされていたその裸身は、素直に美しいと思った。彼女リリアがどう思っているかは、わからない。
「あっ、ああ‥‥あ‥‥あああ!」
 そして、調教は、次第にエスカレートを見せていった。調教室には、連日のようにリリアの嬌声が響くようになった。
「あああああ!」
 その日見た場面も、そうだった。嬌声というより、もう悲鳴になっていた。そしてその悲鳴は、やがて嗚咽へと変わった。
「い、痛いです。お、お許しください‥‥調教士さま‥‥」
 いつも通り、白系統のパンティ一枚で両手を頭上で固定されたリリア。一一〇センチを超えるという彼女のバストは、左右のふくらみをそれぞれ、厚さ一〇センチはあろうかという鈍い光を照り返す黒い板――というよりは塊で圧縮されて、縦長のいびつな形に潰れている。相当な力が加えられているようだ。リリアは、美しい顔を歪ませ、大粒の涙をこぼしている。
 軍人として、幾多の過酷な場面を見てきたわたしだが、胸につかえるものがあった。
「姫‥‥よろしいでしょうか」
「なあに? 内容にもよりますよ」
 わたしが傍らのナディーカさまに呼びかけると、短い鞭を手にした姫は、横目でわたしを見た。
「さしでがましいことは承知ですが‥‥これに、何か意味があるんのでしょうか」
「きゃう‥‥はああああああ!」
 わたしの発言の直後に、リリアが悲鳴を上げた。締めつけ装置は、調教士の手の器官オーガンカードで操作できるようになっている。黒調教士やつは、装置を「万力」と呼んでいた。わたしも実物を見たことはないが、はるか旧時代の原始的な工具のことだ。いま、リリアの乳房を押し潰しているあの装置は、わたしが工場集団との間を往復して作らせた調教用具のひとつで、電流を流すこともできるようになっていた。
 調教士は、わたしがナディーカさまに何か物を言うのを耳にして、力を強めるか、あるいは電流を流したのだろうか。黒い背中を見せたままでわからなかったが、本当に腹の立つ男だ。
 ――わたしの沈黙をどう思ったものか、姫は、どこか上ずった声音で、
「これは、ナディーカの権限ですよ。軍の現場の編成、演習の内容にわたしが口を出して? わたしがわたしの奴隷をどうしようが、ナディーカの自由のはずでしょう? 領分をお考えなさいな」
「それは‥‥おっしゃる通りです。しかし、あれは、その‥‥感じているというより、苦痛にしか見えないのですが‥‥」
「‥‥‥‥」
「わたしも参考として映像で見させていただいた、旧時代の‥‥SM、ですか? あれは、お互いの関係性を深めるための加虐・被虐の儀式であって、単なる性拷問とは違うと思いま――」
「――お黙りなさい! ジェニー! お黙りなさいな! 本当にさしでがましいわね‥‥。どこでそんな言葉を覚えてきたの!」
 姫はわたしの言葉をさえぎって強く叫んだ。どこでと言われれば、やはり参考として資料にあった文書に書いてあったことで、別に特段思い入れがあるわけでないのだが――ナディーカさまは混乱しているようだ。「奴隷」という言い方も、あの調教士が登場するまではしていなかった。以前はせいぜい「ペット」という言い方だったはずだ。頭が固いかもしれないが、リリアは奴隷ではないし、そもそもわが国は、この木星圏の先進国として、他星に先駆けて奴隷制度を廃止した名誉の歴史も持つ国家でもあるのだ。わたしの内には、リリアへの憐憫もあったが、それと同じ程度、いや増すくらいに、姫を変えてしまった黒調教士あのおとこへの怒りが、渦を巻いていた。
「きゃあああああああああっ!」
 ひときわ大きい、リリアの悲鳴があがった。見ると、調教士の奴が初めて振り返り、口元に薄笑いを浮かべてわたしを横目で見ていた。何か操作したのだ。
「――‥‥‥!」
 リリアは、がっくりとうなだれた。顔を隠す長い髪でわからないが、涙か唾液か、一滴が、ぽとんと床に落ちた。
「‥‥‥‥‥‥」
 沈黙が調教室を支配した。姫が、強がるように叫んだ。
「――ふんっ。なんか面白くないっ! 興醒めねっ」
 ――結局その場は、姫が怒って退出したことで、お開きとなった。黒調教士の奴は、
「その方を(=わたしだ!)処罰するようでしたら、お任せを‥‥。さっそく計画書を作りますが‥‥」
などと言い出し、わたしは、たとえそれでさらに処罰されることになってもその場でぶん殴ってやろうかという衝動に駆られたが、必死に堪えた。奴は、
「――調教士殿も、さしでがましいですわ。それは、わたしが決めること。このスガーニーを統べる、ナディーカの権限なのです。あなたも、領分をお考えくださいな」
と叱られ、憮然と押し黙った。ざまあみろだ。姫はわたしにリリアの介抱を命じ、手にした鞭で手近な卓をビシビシと叩きながら部屋を出て行った。調教士の奴も後を追ったのだが、出しなに、わたしは奴と視線を空中で衝突させた。火花が散った。


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