愛しているから-1
◇ ◇ ◇
「倫平くーん、昨夜はお楽しみでしたね」
なんて、どこかのRPGの宿屋の主人みたいな台詞を吐きながら、俺を挟むように修と歩仁内が座る。
今日も暑くなりそうな、抜けるような青空。
湿った潮風すら爽やかに感じる清々しい朝。
それとは対照的な奴等のニヤケ顔に、俺はわざと大きなため息を吐いた。
昨夜のバーベキューの装いはガラリと変わり、テーブルの上に並んだ人数分の紙皿に、サラダや目玉焼き、ちょっぴり焦げたフレンチトーストが乗っかっている。
眩しいくらい明るい空の元で、心地よい波の音を聞きながら食べる朝食はさぞかし美味いだろう。
特に俺は、昨夜のバーベキューでろくに食っていないこともあり、目の前の朝食にさっきから生唾を飲み込んでばかりなのだ。
早く食べたい、とウズウズするのにまだおあずけを食らわされているのは、まだ全て揃っているわけじゃないからで、チラリと中のキッチンを覗けば、女子の皆さんが何やら楽しそうにデザートとおぼしきフルーツを切っているのが見えた。
俺の視線の先は、もちろん沙織。
ヨリを戻すなんて絶対無理だと思っていた俺が、まさか大逆転できるとは。
石澤さんと本間さんと心から楽しそうに笑う沙織の顔を眺めているだけで、こちらまで目尻が下がってくる。
「おーい、何鼻の下伸ばしてんだ」
ポカリと俺の頭を叩く修は、茶化しながらそう言うけど、どこか嬉しそうだ。
やっぱりコイツは何だかんだ言って俺を応援してくれていたのだ。
沙織と二人、力尽きたように眠りについた明け方に州作さんが運転する車が戻ってきた。
布団は敷いてあるのに畳の上で雑魚寝している俺達を、皆はどう思っただろう。
腕枕でひっつきながら寝たい気持ちはあったけど、何せ夏だ。
それでも手だけはしっかり繋いで眠っていた俺達は、歩仁内曰く、
「すげえ安らかな顔で眠ってたよ」
なんて状態だったらしい。
まるで死んだみたいな言い方すんなよ、と睨んだけれど、滲む嬉しさは隠しきれなかった。