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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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愛しているから-9

「し、州作さん……」


強張る身体に、絡み付いていた沙織の腕が、まるで“大丈夫だから”と言い聞かせるみたいに力がこもってくる。


沙織への想いと、沙織の気持ちを信じると決めた今、俺達の間に入り込む存在なんて、恐るるに足らないはずなのに、やっぱり緊張感が走る。


なのに奴はまるで、昨日観たナイターがつまんなかったみたいな軽い感じで、ヨリを戻した俺達をニヤニヤ眺めている。


そんな余裕のある様子に、舌打ちが出そうになる。


勝ったはずなのに負けたような気がして。


そんな思いが態度に出ていたのか、州作さんは少し苦笑いになって、


「そんな怖い顔しないでよ、もう邪魔しないから」


と、お手上げポーズでおどけて見せた。


そんな彼の前に、俺からスルリと離れた沙織が立ちはだかり、深々と頭を下げた。


「州作さん。色々ありがとうございました」


「……どういたしまして」


沙織に言われるとさすがにバツが悪いのか、頬を人差し指で掻きながら、あさっての方向を見つめる州作さん。


「倫平にフラれてどん底だったあたしを支えてくれたこと、本当に感謝してます」


「ま、オレは君らが別れてくれた方が好都合だったんだけどね」


ちらりとこちらを見る視線は、相変わらず挑戦的。


行き場のない手をグッと握り締め、きつく奥歯を噛む。


沙織に俺と話せとアドバイスをしたとは言え、それは沙織に気持ちの整理をつけさせるため。


後は虎視眈々と彼氏の座を狙っていたんだって思うと、殴りかかってしまいそうだった。


そんな俺の元に、沙織がサッと戻ってもう一度腕を組んできた。


「あたし、たとえ倫平とやり直せなくたって州作さんとは付き合うことはありませんから」


奴にあっかんべーをする沙織に、みんながみんな目を丸くして彼女を見つめた。




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