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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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愛しているから-7

……アレ?


言われてもピンと来なかった俺は、首をかしげて沙織を見つめる。


しばしの沈黙。俺は首をかしげたまま固まって、沙織は真っ赤な顔で目を泳がせて。


さっきまであんなに甘い雰囲気だったのが嘘のように、なんだか間抜けな光景になっていた。


「だから、アレが……」


「アレって?」


「〜〜〜〜!」


埒が明かないと思ったのか、沙織は半ばキレ気味に、


「だから、生理が来ちゃったの!」


と、叫んでプイッとそっぽを向いてしまった。


「生理……」


童貞な俺だけど、女の子の身体の事情はさすがにわかる。


姉が“生理痛しんどーい”と青い顔をしながら痛み止の薬を飲んでいるのを何度も見てきたし、友達の話で“彼女が生理だからしばらくできない”とボヤくのを何度も聞いてきた。


だから沙織にも“生理”があるのはもちろん認識していたけれど、彼女は“生理来ちゃった〜憂鬱!”なんて、そういう話を自らぶっちゃけるタイプでもなかったから、今の今まで頭からすっぽり抜け落ちていたのだ。


……ってか、このタイミングで生理って。


プイッと背中を向けた沙織だけど、耳まで真っ赤になっているのが見えると、なんだかとても可愛くて。


そして、俺はついに腹を抱えて大笑いをした。


「な、何で笑うの!?」


くるりと振り返る沙織は、笑い転げる俺をジロリと睨んだ。


「いや、だって絶妙なタイミングだなあって……。

昼間は水着になったりしてたのに」


「し、仕方ないでしょ!? あたしだって予定日はまだだって思ってたのに……」


それでも笑うのを止められなくて、目尻に涙が浮かんでくる。


ああ、神様。あなたはそんなに俺と沙織を結ばせたくないのですか?


付き合う前から不釣り合いなのはわかっていた。


沙織はモテるから、いろんな男が寄ってくるのもわかっていた。


そして、これから先も、俺達は色々な問題や障害にぶち当たってしまうのかもしれない。


でも、真っ赤な顔でむくれている沙織を見て、思うんだ。


もう、俺は負けねえ、と。


愛しているから、全部乗り越えてやる。






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