愛しているから-3
それでもコイツらがこんなにはしゃいでいるのは、やっぱり俺達を心配してくれたから。
そう思えば、こんなバカな奴らだけど感謝の気持ちが沸き上がってくる。
礼もかねて、昨日のいきさつを全て話してやろうか。
そう思って口を開きかけると 、
「まーたエッチな話で盛り上がってんの?」
と、聞き慣れた声が背後から聞こえてきた。
沙織にかなわないのは、俺だけじゃない。
俺より喧嘩の強い修も、何事もそつなくこなす歩仁内も、彼女に強く出られると、物怖じしてしまうのだ。
その声のトーンで、ふと動物的なカンが働いた俺達は、一瞬のうちに姿勢を正して座り直した。
「ね、どんな話してたの?」
ゆっくり俺達の前に回り込む沙織。
後ろめたさで俯いていると、水色のビーチサンダルに控えめなパールピンクのペディキュアが目に飛び込んでくる。
「あ、いや……」
「その……」
両端にはすっかり歯切れが悪くなってしまった奴ら。
そんな様子をこっそり横目で盗み見ながら、やっぱり力関係は沙織が最強なのかもしれないと、ふと思った。
「ま、大体予想はつくけど」
そう言って沙織はニコニコしながらも、仁王立ちで腕を組む。
……やっぱり怖いっす。
そんな中、突破口を開くのはやっぱりこの男。
「だってよ、心配してたんだよオレ達。
やっぱりお前らには別れて欲しくねえし、なんとかヨリ戻して欲しいってずっと思ってた」
「お前、州作さんを応援してたじゃねえか」
調子のいいことを言う修に、つい反射的に突っ込んでしまう。
ま、コイツの狙いはなんとなくわかるけど。
鼻白みつつも俺は修の言い訳に耳を傾けた。
「大体お前らがこじれたのは、全て倫平がヘタレなのが原因だろ?
ホントは州作さんに対してめちゃくちゃやきもち妬いてるのに、ヘタレだから何も言えずにウジウジしててさ。
その状態でオレらがなんとかヨリ戻させたって、いつかまた同じようなことでつまづくと思ったんだ。
だったらこのヘタレが本音で沙織とぶつからせなきゃダメだって思ったわけだ。
だから危険な賭けだったけど、州作さんに沙織を取られる状況にして危機感持たせて、このヘタレを煽って……」
「お前、ヘタレ言い過ぎ」
ふう、とため息を吐きつつ睨んでやると、奴はテヘと笑いながら赤い舌をペロリと出した。