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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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愛しているから-2

こちらでふざけているのに気付いた沙織が、はにかみながらも小さく手を振ってくれたので、俺もまたコイツらに遠慮しながら手を振り返す。


それを眺めながら、


「あーあ、ついに沙織も女になっちまったか」


と、頭の後ろで手を組みながらしみじみと呟く修。


つーか、保護者っぽいんですが。


「別れたって聞いた時はマジで焦ったけど、よかったよなあ。

あの中川さんを、ねえ?」


反対側で腕を組みながらもっともらしく頷く歩仁内。


つーか、口元がニヤニヤしてて怪しいんですが。


とどのつまり、コイツらは俺達がどんな風に結ばれたかを聞きたくて仕方ないらしい。


「あのな、俺達は……」


呆れながら口を開いた瞬間、奴等は俺に襲いかかりそうな勢いで肩を組んできた。


修はガムでも食べていたのか、グレープ風味のやけに甘い吐息が香る。


「なあ、どうだったんだよ、初体験の感想は」


「中川さん、やっぱりスタイルよかった?」


やっぱり知りたいのはそこらしく、ニヤケる奴らの顔が気持ち悪くて仕方ない。


そりゃあノロケとして思いっきり自慢したい気持ちはある。


だけど、女の子サイドからすれば、自分の知らないとこでそういう話で盛り上がられたらいやな気持ちになると思う。


それに、そもそも……。


そこまで考えつつ、そんな人に呆れながら、


「おい、あのな……」


なんて制してみるのだが、


「どんな流れでそういう雰囲気に持ち込んだんだ?」


とか、


「仲直りの後のアレって燃えるんだろうなー」


とか、勝手に盛り上がっては妙な奇声を上げて、てんで俺の話を聞こうともしない。


以前の俺なら、この中に入って羨望の眼差しで経験済みの友達に根掘り葉掘り聞いていたんだよなあ。


あー、アホだった、俺。


鼻息荒くして、友達の経験談を聞いていた自分を思い出すと、ついつい苦笑いになった。




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