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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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愛しているから-10

そして彼女はおどけつつも、


「だって、あたしの好きな人は倫平だけなんで」


と、不敵な笑み。


そして、一瞬にして押し黙るみんな。


あっけらかんと想いを口にする彼女の横顔は、なんだか凛としていて、思わず見惚れてしまった。


さすがの州作さんも、呆気に取られていたようで、ポカーンと口を開けていたけれど、それがやがて弓のように曲がったかと思うと、小さく肩を震わせ始めた。


「なんだ、最初っからオレの出る幕なんてなかったわけね。

沙織ちゃんをいただく作戦は失敗かあ」


口では残念そうに言ってるけれど、屈託無く大口を開けて笑う州作を見て、ふと思う。


――州作さんは、本気で沙織を奪うつもりなんてなかったんじゃないか、と。


確かに州作さんが、沙織を気に入ったのは誰の目にも明らかだし、彼女に告白し、キスをしようとしたのも事実なら、彼氏の座を狙っていたのは本気だったと思う、その時は。


だけど、それを突っぱね、俺を想ってくれていた沙織の姿を見て、彼女を奪うより幸せになれるよう応援すると、気持ちが変わったのかもしれない。


だって、そうでもなければ、誰が俺というライバルの所に二人きりにさせるんだ?


爽やかに笑うその表情からは、本音を読み取ることなんてできないけれど、なんとなく、ただなんとなく、そんな気がした。





「さ、何だかんだで一件落着した所で、メシにしない? すげえ腹減っちゃった。

あ、そうそう。フライパンの中のフレンチトースト、焦げかかってたからお皿に移しといたから」


州作さんが親指でキッチンの方を指し示すと、石澤さんと本間さんが、


「あ、忘れてた!!」


と、慌てて掃き出し窓から中へ入っていく。


そんな乙女二人の後ろ姿を目で追っていた修が、


「よし、オレらも運ぶの手伝うか」


と、歩仁内を誘う。


ああ、今までのように戻った。そんなことを思いながら。



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