同級生女子からの電話-3
「何の電話なの?今の女の子と親しいの?参加OKって何?その子とどこかに行くの?」
結衣の心の中の不安を示すように、矢継ぎ早の質問が次々と出てきた。
結衣には白石先生の計画のことは余り教えたくはなかったが、このままでは納得しないだろう。取り敢えず基本的な誤解だけは先に解いてから、本題は母親の手が空くのを待ってからにしようと思った。
「本多はただのクラスメートだよ。本多には彼氏も居るし、結衣が心配するような関係じゃないよ」
「彼氏?本当なの?」
結衣の顔の緊張が少し弛んだ。
「ホラ、オレ達と同じ中学出身の赤木だよ。オレより背が高くてバスケやってる赤木、知ってるだろ」
「えっ!じゃ、じゃあ、今の本多さんて、あのテニスやってた本多さんなの?赤木くんの彼女ってことは、一目惚れしてバスケに転向したって噂は本当だったんだ!」
好奇心を刺激されて、結衣の目がワイドショーを見る時の母親のように輝いた。この手の話は女にとっては心の肥やしになるんだろうな。オレの説明で、心配しすぎて硬くなった結衣の顔がほぐれたようだ。
「そうそう、それに本多はオレよりも結衣の方に興味があるみたいだぞ」
「あたし?どうして」
結衣がキョトンとした。
「中学の時に試合をしたのを覚えてて、機会が有ったらプライベートでテニスがしたいんだって」
「へ〜、県1位の実力者に覚えて貰えるなんて光栄ね」
満更でも無さそうに結衣は喜んだ。
「そうだ!今度、赤木くんも誘って4人でテニスしようよ。夏休みの思い出作りパート2ね」
電話を切った直後に比べて、見違えるほど表情が明るくなった結衣が提案した。やっぱり、結衣は明るい表情が似合っている。ホッとしたオレは結衣の頭を撫でて、嬉しそうに微笑む笑顔にキスをした。
「えへへ、もう一回♪」
結衣の願いを叶えてから抱き締めた。改めて今の結衣との関係性を感じて凄く幸せな気分になった。
しかしテニスか…。その素質が全く無いオレはホンの少しだけブルーになった。
母親の手が空いたので、親に同意して貰いたいことが有ると断り、担任の白石先生と本多達の計画していることを話しを始めた。
「ウチのクラスの真下って子が、結婚することになったんだよ」
真下の結婚は、学校も教育委員会もいい顔をしない。当然にして結婚式も内緒にということになり、新婦側はかなり寂しい結婚式披露宴になるはずだった。
それを良しとしない担任の白石先生と、当初から出席予定の真下の中学時代からの友人の本多を含めた3人が、クラスメートと、真下が在籍するバドミントン部の全員参加を画策していたんだ。
そして問題の起きないように、本多を中心に保護者に同意を貰い、同意をしない保護者を説得に当たっていた。
これらのことはクラスメートからのサプライズプレゼントとして、真下には内緒で行われていた。
「結婚!ウソでしょ!裕樹のクラスの子って言ったら、まだ16歳じゃないの!出来ちゃった婚?相手は誰よ?学校はどうするの?あんたはそんなことしてないわよね?」
驚いた母親が心の中の好奇心を示すように、矢継ぎ早に質問を繰り返した。最後の質問にドキッとしつつ、ついさっき同じように質問を繰り返した結衣を思い浮かべて、改めてDNAを感じた。その結衣も母親の横で結婚のニュースに目を見開いて驚いていた。
それはそうだろう。オレも小柄で可愛い系の真下千尋の結婚にはたまげたからな。