7章-3
「そこ、ダメっ だっ あぁああっ……っ!!」
髪を振り乱しながら喘ぐ麻美を無視するように、匠海は下から腰を突き上げる。
パチュパチュと、艶めかしい音が幾度かした後、
「イクイクイクっ……っ!!」
そう悲鳴を上げた麻美は、急に仰け反るようにして、びくりと大きく震えた。
匠海が「くっ」と苦しそうな声を上げ、目蓋を閉じ、何かに耐えていて。
その後、がくがくと小刻みに震えた麻美。
やがて、操っていた糸が切れたかの様にぐったりすると、匠海に凭れ掛かり動かなくなった。
(え……っ!? な、何……? い、今のが……『イク』って、こと、なの……?)
目をそらす事も出来ず、一部始終を見せられてしまったヴィヴィは、混乱しながらもそう悟った。
そんな妹の目の前。
匠海は少し乱暴にも見える動作で、気を失った麻美をソファーに横たえると、
急いでその中から己を引出し、その陰茎を二三度しごくき。
先端から、麻美の太ももの上に、白濁の何かを吐き出した。
「……ぁっ ……はぁ、はぁ……」
目蓋を閉じ、端正な顔をうっとりと歪める匠海には、
ヴィヴィが今迄に目にした事の無い、まるで滴り落ちる様な色香を漂わせていた。
(お……兄ぃ……、ちゃん……?)
ヴィヴィは、がんがんと痛みを訴える頭を抱えながら、熱に浮かされたように心の中で呼びかけたが、
やがて ずるずると膝をつくと、その場に突っ伏すように倒れ。
そして、意識を失った。
目を覚ました時、ヴィヴィはベッドの中にいた。
「……………」
首元まで上掛けが掛けられ、寒さは少しはマシになっているも。
だが、やはり寒気がする。
咽喉もひりひりと痛い。
咽喉の渇きを覚え、上掛けを捲って上半身を起こそうとした時、すぐ隣で物音がした。
「ああ、気が付かれましたか。どうしました?」
傍にいたのは朝比奈だった。
ヴィヴィはほっとし、指でベッドサイドに置かれている水差しを指す。
「咽喉が渇いたんですね? 待っていて下さい」
執事は言い置いて水を用意すると、主の上半身を支えて口に含ませた。
ひんやりした水分が、熱くひり付いた咽喉を通り、気持ちいい。
もっと飲みたかったが「お腹が冷えるからもう駄目です」と言われ、渋々諦めた。
ベッドの中に横たえられ、ヴィヴィは「今……、何時?」と掠れた声で問う。
「24時ですよ。もう半日程 寝ておられましたね。何かお腹に入れられますか? 高熱が出ているので、解熱剤を飲ませたいのですが」
大きな掌が、ヴィヴィの金髪が垂れたおでこに乗せられる。
冷たくて気持ちいい。
食欲はなく、首を小さく振って意思表示すると、
それだけで激痛が走り、ヴィヴィは顔を顰(しか)めた。
「果物はどうですか? 桃と苺とメロンを擦って、お持ちしましょうか?」
それだったら咽喉を通るかもと、今度は大きく瞬きをして意思表示をした。
朝比奈がふっと笑って、準備をする為に席を立ち。
しばらくし、寝室の出口の辺りから、ぼそぼそと話し声が聞こえてきた。
(24時だから、クリスが練習から、帰ってきたのかな……?)
ぼんやりとそう考えていると、絨毯張りの寝室の床を擦るような足音が近づき。
クリスに風邪をうつしたら大変と焦り、その音がするほうにゆっくり顔を向けると、
傍に寄ったのは他ならぬ、匠海だった。
「起きた? 大丈夫か、ヴィヴィ?」
小声で囁きながら、労わる様に掛けられた声に、ぱちくりとする。
匠海を目にした途端、頭がぼうとして、返事を返したいのに何を言っていいのか分からず。
「さっきクリスが戻って、ヴィヴィに会いたがってたけれど、うつったらまずいから部屋に入れないからね」
ベッドの傍に置かれたスツールに腰を下ろした匠海は、妹を見て苦笑した。