4章-4
「何でだろう?」と頭の中で考えを巡らせながら、視線を彷徨わせていると。
偶然、上から覆い被さっている、匠海の下半身が目に入った。
上半身だけ裸だと思っていた匠海の身体には、羽毛布団が掛かっていて、
腰から下は暗くて見えにくいが――どうも肌色に見える。
「お兄ちゃん……」
「…………何?」
視線を兄の下半身から顔に戻した妹と目を合わせ、匠海が訝しげに尋ねる。
「お兄ちゃん、下……何も履いてないの?」
「…………え?」
視線を自分の下半身にやった匠海は、自分が全裸であり、
なおかつまるで妹を襲っているかのように覆い被さり、その両手を拘束しているという――まさに危ない状況、である事を瞬時に悟った。
「――――っ!!」
咄嗟にヴィヴィの手首から両手を離し、下半身にシーツを巻きつけた匠海だったが、
その隙にするりと、匠海の下から這い出したヴィヴィは、
「じゃあ、練習に遅れちゃうから! また夜ね〜」
と言い捨て、そそくさと兄の寝室から退散した。
その後ろ姿に、
「こらっ ヴィヴィ、待ちなさい!」
そう兄が焦って声を掛けたが、急いでいた妹の耳には入らず。
後にはキングサイズのベッドの真ん中、座り込む匠海だけが残された。
「……BST、……ちゃんと、性教育、してるんだろうな……?」
しばらく経ったのち、匠海はぼそりと疑問を零す。
匠海は双子の通うインターナショナルスクールには通わず、幼稚園から高校まで名門私立に通っていた。
そこでは小学校高学年から、少しずつ段階を踏んで性教育――特に避妊について教えられてきた。
英国人のほうが日本人より身体の発育が早いだろうし、さすがにもうBSTでも性教育はなされているだろうが――。
まさかヴィヴィに「子供の作り方、知ってる?」と聞く訳にもいかず、
匠海は深いため息を漏らし、やがてボスッと音を立ててベッドに突っ伏したのだった。