2章-2
唯一、式典や期末考査の時には、男女共かっちりとしたジャケットの着用が、義務づけられている。
「そのうちヴィヴィ達も、他のスケーターみたいに、テレビに出まくるんだろうな〜?」
ヴィヴィの親友のカレンが、双子を見比べながらそう言う。
ちなみに彼女は、100%イギリス人だ。
両親が英国大使で日本に派遣され、ここに通っている。
「う〜ん、どうだろう? でもシニアに上がって結果残して、なおかつ人気が出なければ、そうでもないんじゃないかな?」
ヴィヴィは首を傾げてクリスに話を振るが、双子の兄は先ほどからずっと妹のほうに向かって座り、
机越しにヴィヴィの長い髪を無気力にいじっている。
「ん〜……、ヴィヴィと一緒だったら、出るけど……」
「けど?」
歯切れの悪い返事を返すクリスに、他のクラスメイトが突っ込む。
「けど、正直……面倒くさい……」
そう気だるげに答えたクリスは、眠そうにヴィヴィの机に突っ伏した。
「贅沢なっ!! そのうち可愛いアイドルや女子アナに、直に会えるかもしれないのに〜っ!」
クリスの返事に周りにいた男子達が、ヒートアップして騒ぎ出す。
けれどクリスから帰ってきた答えは、
「基本、興味ない……」
という味気ないものだった。
「はぁ……こいつ女子にモテるのに、シスコンだもんな〜、もったいなすぎる」
「ヴィヴィ、彼氏作るとき、絶対苦労するぜ?」
そう――、
ヴィヴィはブラコンだが、双子の兄のクリスもそこは似たようで、自他共に認めるシスコンだった。
しかしヴィヴィの匠海に対するブラコン度合は、親友のカレン以外には知られておらず。
ヴィヴィは「あはは……」と乾いた笑いを零しながら、目の前のクリスの金髪を、細い指先で梳いてごまかしたのだった。