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衛星和誌 −Qカップ姉妹−
【SF 官能小説】

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ジェニファー語り(3)-1

 あの調教士は、召還されて比較的早い時期に事態と自分の立場を飲み込むと、さっそくメイドのリリアの調教りょうりにとりかかった。料理というのは――あの男は、惑星地球の元の世界では、料理人だったそうだ。ナディーカさまは、召還の儀の現場にも赴いた。後から聞いた話では、おそらく、あの男が目を覚まして最初に見た人間はナディーカさまだろう、ということだった。コンジャンクションにかける姫さまの、熱の入れようがうかがえた。
 リリアの調教には、姫さまも初期からお立会いになった。そして、各種公務の報告等でわたしも姫さまにお会いする必要があり、調教の開始からさほど日を置かず、わたしもその現場に出くわすことになった。
「ふふふ、すました顔してとんでもない乳してやがるな。まったく、何が詰まってやがるんだ」
 最初のその機会はたしか、あの男がリリアを膝上に乗せ、背後からその巨乳を揉み込んでいる場面だった。
「でしょう? でしょう? もっとやっちゃって下さい」
 ナディーカさまは、男が見せる刺激にすっかり興奮しておられた。
「言われんでも――‥‥おっと、こいつはまた、なかなか名器だな‥‥」
 男は黒い服を好んで身につけたが、あのとき、すでにそうであったと思う。コンジャンクションは国家プロジェクトであり、リリアの調教はその一環にすぎない。そして、リリア・ミアヘレナはその当時、わたしにとっては公私ともに薄い存在だった。だから、意志のないお人形のように扱われる彼女の姿にも、わたしは何ら感じるところはなく、立ち入ったことにも関わるつもりはなかった。ただ、ナディーカさまの入れ込みようが、気にはなっていた。

 しかし――私情を挟むことが許されるのなら、わたしは、あの男が嫌いだった。
 あの男は、わたしのこともいやらしい目つきで眺めていた。ついに、リリアの調教が軌道に乗り始めたあるとき、わたしの胸をまさぐったのだった。あろうことか、姫さまの目の前で‥‥!
「何をするか! ――下郎! 恥を知れ!」
 あの男を突き飛ばし、帯びていた細剣レイピアの柄にわたしは手をかけ、叫んだ。
「わたしはそこのメイドとは違う! ――姫さま、御前おんまえで、よろしいでしょうか? いえ、殺しはいたしません‥‥!」
 怒りと嫌悪感に溢れながら、わたしは傍らの両腕を吊り上げられた半裸のリリアを示し、そして腰かけて調教を見守っていたナディーカ姫さまに向き直ったのだった。この細剣レイピアは実戦用ではないが、刃は鋭く尖らせてある。逆に言えば、刃は鋭いが、実戦向きではないし、実は構造上、強い衝撃には弱いのだが‥‥。わたしは、どうせ実戦用でないなら、わが護衛隊の象徴シンボルである大斧を振り上げてやりたかった。それくらい頭に血が上っていた。尻餅をついた格好の調教士は、わたしが当てた肘鉄で口内なかを切ったのか、口元を拭いつつ姫とわたしとを見くらべていた。わたしもそんな男と姫に交互に視線を走らせ、そしてナディーカ姫さまも同じようにしていた。
 結局、その場は姫のご意志により、男がわたしに謝るというという形式でおさめることになったが、わたしは腹の虫がおさまらず、また日ごろ感じていたことをナディーカさまに申し上げた。
「ナディーカさま、あの男は、姫さまのこともいやらしい目つきで見ております。よろしいのですか?」
「‥‥知っています。男とは、そういう生き物でしょう? そんなことをわざわざ伝えに?」
「――‥‥‥‥」
 もしもお許しならばわたしの手で処罰を、という言葉は飲み込まねばならなかった。
「ナディーカがあまりに魅力的すぎるから、くらいおっしゃいなさいな‥‥。――さっきので、あなたも少し感じたのではなくて?」
 その言葉の意味するところを理解し、わたしはキッとなって言い返していた。
「姫さま‥‥! いえ、ナディーカさま‥‥。いくらナディーカさまとて、あまりのお言葉でございます‥‥!」
「ふふふ。おお怖い怖い‥‥。冗談ですよ、ほんの冗談‥‥。謝ります。ごめんなさい(このときばかりは姫は本当にしおらしくいじらしい少女で、その姿は鈍いわたしの胸をも打った)。――ですがジェニー、あなたも少し、お勉強が必要かもしれませんね」
「‥‥‥‥」
 勉強とは、女体や女心を籠絡するにあたっての、ということだった。ちょうど手伝いを求めているということで、わたしはその日以来、あの調教士のサポート役まで務める羽目になった。
 他の公務は減らしていただいたから仕事量的には問題なかったが、わたしにはつらい時間だった。とりあえず、このわたしには指一本触れるな色目も使うなとあの男に念を押して、その仕事をこなすことにした。


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