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愛しているから
【青春 恋愛小説】

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強い気持ち・強い愛-1

ゆっくり振り返ると、沙織が布団の上で身体を起こして、ジッとこちらを見ていた。


今にも泣き出しそうな瞳で。


沙織がどんな想いでそう言ったのか、そんなことを考える余裕なんてまるでない俺は、


「沙織! 起き上がって大丈夫なのか!?」


と、テンパったまま変に大きな声を出しては、慌てて彼女の元へ駆け寄った。


名前を呼んでくれたこと、“行かないで”と言ってくれたこと、それも俺にとっては大きな出来事だけど、今の俺には沙織が意識が戻ってくれたことが何より大事なことだったのだ。


「よかった……、気がついて。気持ち悪くないか? 吐き気はどうだ? 水飲むか?」


後でどれだけウザがられてもいい、とにかく沙織の体調を回復させるのが先決だ、と、俺は矢継ぎ早に沙織にしてもらいたいことはないか質問攻めにした。


なのに、沙織は下唇を噛み締めながら首を横に振るだけ。


そして、その内に彼女の瞳からプクッと朝露のような雫が溢れたかと思うと、スウッと滑らかな頬を伝うのだった。


一滴、また一滴。


次から次へと溢れてくる涙に、また焦った俺は慌てて彼女の肩を掴んだ。


「大丈夫か!? やっぱりまだしんどいんだろ!? 無理して起きなくていいからちゃんと横になっ……」


「違うの!!」


俺の言葉を遮る強い口調。


驚いて言葉を失った俺を、沙織はジッと見つめていた。


そして、一気に静まる部屋。


掛け時計の秒針の音や、外から聞こえてくる波の音、エアコンのモーター音が聞こえるだけの静かな部屋に、俺の生唾を飲み込む音がやけにデカく聞こえた。


「……ごめんなさい」


見つめ合ってからの沈黙の末、彼女は泣いたせいか少しだけ鼻にかかった声でそう謝った。


……何が?


突然の謝罪に頭が真っ白になる。


傷つけたのは俺の方であって、沙織が謝る理由なんて全く身に覚えがない。


だけど彼女は気まずそうに黒目を揺らしては正座した膝をギュッと握っている。


沙織がそうする理由がどうしてもわからなくて、キョトンとしていたけれど、埒があかないと彼女も思ったのか、ややうつむき加減のままで、


「……あたし、ホントはお酒なんて飲んでなかったの」


と、言った。




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