強い気持ち・強い愛-3
酔って倒れたフリをして。
その結果、みんながパニックになって、電話を借りに行くと一斉に車に乗り込んで。
何人か残ってもらおうと、必死で止めたのに薄情なアイツらはさっさといなくなって……。
フラッシュバックするみたいに、さっきの修の言葉が脳内を走った。
――お前が沙織についててやれ。
少しだけ目を見開いて顔をあげると、バツが悪そうに俯く沙織の姿。
……もしかしたら。いや、絶対そうだ。
確信を込めて、俺は震える唇を開く。
「沙織……」
そして、彼女もまた俺の言うことをわかっていたかのように、
「……みんなもお酒なんて飲んでないの」
と、尻すぼみな口調でそう言った。
一気に身体の力が抜けていく。
やっぱり明らかにアイツらの行動がおかしかったのもこれで合点がいった。
やがて沙織がポツポツとこれまでの事情を話し始める。
まず、みんなが飲んでいたものは、すべてノンアルコールのもの。
ノンアルコールビールやノンアルコールカクテルなんかは、お酒が飲めない人も楽しめるように、パッケージは本当のお酒にそっくりになっている。
だけどいくら見た目にわからなくても、それだと俺が飲んだ時にバレるから、お酒もちゃんと用意してテーブルに並べていたそうな。
「ホントはね、倫平を酔わせてあたしが介抱するって作戦だったの」
「え?」
「……あたし、実はさっきの買い出しの時に州作さんに告白されて、キスされそうになって……」
「はあああ!?」
女の子って生き物は、話があちこち飛ぶことが多い。
沙織と話をしていても、テレビの話をしていたかと思えば、次の瞬間には友達の話になっていたり、そんなことが多かった。
脈絡もなくコロコロ変わる話しぶりに、付き合った当初はついていくのが精一杯だったけど、今じゃそれにもちゃんとついていけるようになったと自負できる。
だけど、この話にはさすがに頭がついていかない。
キスって何だよ、キスって!!