風呂上がりの夜空に-4
からかうだけからかうと、シホは鼻歌まじりに風呂場にいってしまった。
すぐに盛大に湯をつかう音が聴こえてくる。
「まったく・・・」
ブツブツ言いながらもユウジは手際よく食器洗いを済ませて、テレビ前のソファーに陣取った。
2時間スペシャルのバラエティーはもう始まっていたが、この手の番組はCM明けに何度も同じ場面を繰り返すので、最初から観なくてもすぐに追いつく。
本当なら自室で観たいところなのだが、西日の差し込むリビングと反対側にあるユウジの部屋にはワンセグの電波が入らない。
だから、どうしても番組終了まではここで踏ん張る必要があった。
何があっても、絶対に。
「おさきー」
しばらくしてシホが風呂から上がってきた。
タオルでわしわしと髪を拭きながら、どすんとユウジの隣に腰をおろす。
上はTシャツ。下はジャージ。
上気した身体からは、まだ湯気がたちのぼっているかのようだった。
「なに観てるの?」
「なんだっていいじゃん」
「なになに?ローカル線でゆく旬の味覚と湯けむり紀行2時間SP?」
頭にタオルを巻きつけたシホが新聞を広げて言った。
「あんた、こういうの好きねー」
「別にいいだろ」
「いいけどさー。なーんかジジむさいっていうか、オバハンくさいっていうか」
ユウジは無視した。
言いたいことは山ほどある。
だが今はテレビに集中すべきだ。
心和ませる番組を凝視すべきだ。