風呂上がりの夜空に-20
ぎょっとしてシャンプーの泡の中から横目で見ると、シホは顔の半ばまで湯に浸かり、ブクブクと口で泡をつくっていた。
身体を綺麗に洗い、湯槽で暖めたので人心地がついたのか、むくれ顔とはいえ表情が戻りつつある。
ほっとしていいのか、慌てたほうがいいのか決めかねてユウジが返事をできずにいると、シホもまた横目でユウジを睨み、あぶくの中で何か言った。
「え?」
よく聞き取れなかったユウジが訊き返すと、シホはさらにむくれた顔をして、あぶくの中で何か言う。
耳をそばだてて聴くと途中までは、
「それがイヤなら・・・」
と言っているらしいが、その先が聞き取れない。
仕方なく何度も訊いていると、業を煮やしたのかザバッと湯から顔を出し、
「言いつけられるのがイヤなら、今度はゴムつけて!」
そう言い捨てて、むくれ顔はまたブクブクと沈んでいった。