風呂上がりの夜空に-2
ただ、ユウジはこの世間とは違う両親が嫌いではなかった。
母親は編集者として相当やり手だし、父親もライターとしてそこそこ売れていて、たまに雑誌などで記名記事を見かけたりする。
何より成績さえ中の上をキープして、夜遊びなど所謂「わるさ」をしなければ、それ以上は干渉してこないのが思春期の男子としてはありがたい。
それに絶対に口にしないが、仕事のできる両親というのは、ちょっと尊敬できるところもある。
「ねーユウジ。晩ごはん、なに?」
問題はこの姉だった。
別に嫌いというわけではないが、ちょっと困ったクセがある。
「・・・何が食べたい?」
「ハンバーグ!」
「わかった・・・」
ユウジは自室に鞄を放ると、冷蔵庫の在庫と新聞の折り込みをチェックをして、近所のスーパーまで買い物に出た。
夕方から買い物に出るとちょうどタイムセールがある。それはいいが、戻って夕食の準備をしていたら机に向かう時間はなくなる。
「学生の本分は勉強だぞ。姉貴そこんとこ、わかってんのかな」
もっとも彼は有名大学を目指しているわけではなく、従ってさほど勉学に打ち込んでもいないわけだが、
「男子高校生が女子力あげてどうすんだっつーの」
そう愚痴が出てしまうのも無理はなかった。
なにしろ姉のシホは炊事から掃除、洗濯など一切の家事が苦手ときている。
苦手というかまったくできず、やると必ず悲惨なことになる。
きょうび家事は女の仕事などと言うつもりは更々ないが、彼女くらい徹底して駄目だと日常生活に支障をきたすのではないか。
というか、人としてどうなんだろう?