28章-3
「これは……」
それは美冬から鷹哉にあてた手紙だった。
高柳は一週間前に鷹哉からそれを預かり、中は確認済みだった。
封筒を取り出して内容を確認した鏡哉が目を見開いている。
「……大学の学費援助を、断った――?」
「ええ。そしてこちらが身辺調査の結果です」
高柳はもう一つの封書を開け、中を読み上げる。
「大学の知人等から確認したところによると、貯金がつきた鈴木美冬は大学2回生いっぱいで休学し、働いて残りの学費を稼ぐようだ」
そう読んで顔を上げると、鏡哉は訳が分からないという顔をしていた。
「美冬ちゃんは結局、取締役から一円も受け取っていませんよ」
「どうして……」
鏡哉が呆然とした表情で高柳を見てくる。
「どうして? そんなことも分からないんですか?」
高柳は大きくため息をつくと、残りのワインを飲みほして立ち上がった。
「後は自分で考えて行動して下さい。ワイン、ご馳走様でした」
鏡哉をちらりと見つめた高柳は、部屋を辞去した。