新たな生徒たち-4
悪夢のような一時間が終わった。カルチャースクールの入っているビルを出ると、ププッ、と鋭いクラクションの音が聞こえた。早紀は音のしたほうを向く。そこには車が停まっていた。窓が開き、キモ豚が顔を出す。
「桃井、早く乗れ」
早紀はそれを無視することができなかった。先週キモ豚の言うことを聞かなかったから、佐伯くんたちが講座にやってきたのだ。無視したらつぎはなにをされるか――。
早紀は緊張しながら助手席に乗り込んだ。とたんに、煙草のにおいとキモ豚の体臭と安っぽい芳香剤の香りが鼻腔を蹂躙する。あわてて息を止めた。
「おれのうちに向かうぞ」
早紀は無言で頷く。
車が発進し、つまさきになにかが当たった。足もとを見ると、ピンクの半透明の長細いものが転がっていた。
――これって、もしかして……。実物を見るのははじめてだけど……。
みるみる早紀の頬が赤くなっていく。
「お、バイブ、そこに落ちてたか。前に使ったときに忘れたらしい」
キモ豚は運転しながら横目でそれを見て、ぐふぐふ笑った。
早紀は素直に車に乗ってしまったことを、激しく後悔していた。今日の悪夢はまだ続いているらしい。