おまえ、大人になったなあ-1
健太郎の部屋。小さなテーブルを挟んでその双子の兄妹は手にコーヒーカップを持って向かい合っていた。
「思えば、」真雪がにこにこしながら言った。「ケン兄とこうやって二人きりでお茶するのって、初めてじゃない?」
「確かに」
「ごめんね、無理言っちゃって」
「いいさ」健太郎も微笑んだ。「ルナに言われて、なるほどな、って思ったし」
「何て言われたの? 春菜に」
「セックスするためだけに夫婦をやってるんじゃない。誰でも、っていうわけにはいかないけど、心が通じ合った男女であれば、癒し合えるセックスもありじゃないか、って」
「おお、いいこと言うね、春菜。で、正直どんな気持ち? 妹のあたしを抱くことになって」
「正直、俺、ミカさんとの初体験の時や、初めてルナとセックスした時より今の方が緊張してる」
「えー? なんで?」
健太郎は早口で言った。「だ、だって、お前、まさかいっしょに母さんから生まれた双子の妹とセックスするなんて夢にも思わなかったぞ」そして焦ったように額の汗を拭った。
「まあ、それはあたしもだけど」真雪はカップを口に運んだ。
「お前はどうなんだ?」健太郎もカップを口に運びながら上目遣いで妹を見た。
真雪はひょいと肩をすくめた。「あたし、ケン兄に抱かれるのは全く抵抗ないよ。そりゃあ、龍とつき合い始めてすぐのころや20代の頃だったら抵抗があったかもしれないけど、春菜の言うとおり、癒しを求めてのセックスだったら風俗なんかに通うよりずっと健康的だと思うもの」
「そんな感じなんだな……」健太郎は拍子抜けしたように言った。
「昔みたいにさ、最初は手を繋いで横になってみようよ」
「そ、そうだな」
健太郎と真雪は、下着姿でベッドに並んで横たわった。そして手を繋ぎ合った。
「わあ! 懐かしい!」真雪が言った。「甦るよ、小学生の頃」
「うん。確かに。毎晩俺たちこうやって手、繋いで寝てたな」
「ケン兄の温かい手を握ってると、安心して眠れた」
「そうなのか?」
「うん。今は龍に身体を抱かれてると同じ気持ちになるよ」
「へえ」
「にしても、」
「何だよ」
「まだこのベッド使ってるわけ? 春菜と一緒の時、狭くない?」
「俺も気になっててさ、もっと大きなベッドにしようか、ってルナに言ったら、ケンとずっとくっついていられるから、これでいい、って言われた」
「はいはい。ごちそうさま」真雪は笑った。
「おまえんちのベッドは広いのか?」
「うちはキングサイズだよ」
「あの部屋にキングサイズ? でかすぎだろ」
「だって、龍、やたらと動くんだもん。落っこちないように大きいのにしたの」
「動く? ああ、たしかに寝相悪いよな、あいつ。ちっちゃい頃泊まりに来た時も俺、ここで何度もあいつに蹴られたり押しやられたりしたからな」
「いや、寝相じゃなくてね……」真雪は少し頬を赤くした。
健太郎は真雪の顔を見て、すぐに勘づいて呆れ顔をした。「そうかそうか。激しいんだな、おまえら」
「えへへ……」
健太郎は少し躊躇いがちに身体を真雪に向けた。そしてブラ越しに彼女の乳房にそっと指を這わせた。「お前、ホントに大きいのな、今さらだけど」
「中学の頃からずっと見てたでしょ? この胸」
「見てないよ」健太郎は赤くなって言った。
「でも、あの頃は自分の胸が大きくなっていくのがとっても恥ずかしかった」
「そうなんだ……」
「しゅうちゃんによく馬鹿にされてたもん。『爆乳女』って」
「あいつ、そんなこと言ってたのか? おまえに」
「うん」
「で、でも、おまえ、こないだ、その修平に抱かれたんだろ? 修平、どんな反応してた?」
「感動してたよ。それに、子どもみたいにおっぱいに顔埋めてたし」
健太郎は肩をすくめた。「実はあいつ、当時からおまえの胸、気にしてたんだ」
「そうなんだってね」
「修平に聞いたのか?」
「うん。あたしの胸、触るのが夢だった、って感動してうち震えてた」
健太郎は噴き出した。「あはは! あいつそんなに」
「中学校に入学した日に、俺、修平とケンカしただろ?」
「あー、あれね。あたしびっくりしちゃったよ。後にも先にもケン兄があんなに乱暴になったことなかったからね」
健太郎は照れたように笑った。「あれは、修平がおまえの胸をいやらしい目で見てたのに我慢できなかったからなんだぞ」
「そうらしいね」
「知ってたのか?」
「うん。そのこともしゅうちゃんに抱かれる時、聞いた」
「そうか」
「ケン兄って、シスコンだったんだね」
「おまえが言うな」