き-3
「由香里ちゃん。今年はチョコ期待してるから」
「え・・・。あ。石島さん」
そう言うと私のほうを向いてニヤッと笑う。
「冗談。さ。行こうか。お昼は食べたの?」
促すように私の腰を自然に抱いて方向を定めた。
「この時間に帰れるときはいつも食べずにやっちゃうんです」
「うん。俺も同じ」
「じゃぁ、食べてから行こうか」
「どこに行くんですか?」
「ん?俺んち。メールしただろ?」
「あ。はい」
そっか。石島さんの部屋に連れてってくれるんだ。
なんかちゃんとした彼女扱いにうれしくなった。
ただエッチをするだけなら。
ラブホなのかな。なんて漠然と考えていたから。
そっか。自分のテリトリーに招待してくれるんだ。
私の心を見透かしたように。
そんなことを思った瞬間に
腰を抱く手に力が入って、数センチ引き寄せられた。
「どうした?」
私のほうも見ずに、まっすぐ前を向いて
少し硬い声で石島さんがボソッとつぶやいた。
「いえ。ラブホじゃなくてうれしいな。と思って」
「そうか。家は親密過ぎて嫌だと言われるのかと思った」
「まさか。なんか石島さんのプライベートに招待されたようでうれしいです」
「うん」