21章-2
洗面所で服を脱いだ美冬は、バスタオルを巻いておずおずとジャグジーへと近づく。
「あ、あっち向いててください!」
こちらをにやにやと見つめている鏡哉に、美冬は反対方向を指し示す。
「恥ずかしがり屋だなあ、美冬は」
くすくすと笑われながら、美冬はタオルを取ってシャワーをさっと浴びるとジャグジーに浸かる。
気恥ずかしい美冬は、鏡哉から離れた隅に小さくちじこまる。
「こっちおいで」
そう言って美冬を引き寄せ簡単に背中から抱きしめてしまった鏡哉は、とても楽しそうだった。
(こんなに喜んでもらえるなら、もっと入っておけばよかったな)
体を強張らせていた美冬も徐々に鏡哉の胸に背を預け、リラックスする。
背中にとくとくという鏡哉の規則正しい鼓動が伝わってくる。
目をつむると人肌のお湯と鏡哉の体温が一緒で、自分のすべてを鏡哉に包まれている気分になる。
「ふふ、幸せ」
思わずそう言った美冬に、鏡哉がくすりと笑う。
「私も、いつも美冬と一緒にいられて幸せだよ」
そう美冬の耳元で囁いた鏡哉は、腕を緩めると美冬の両胸をやわやわと揉みあげる。
自分の小さな胸が大きな鏡哉の掌でふにふにと形を変えていくのを見るのは、とんでもなく恥ずかしかった。
「あ、ダメ……今日は普通にお風呂に入るの」
しかし鏡哉は胸への愛撫を止めてくれない。
乳首をつまんできゅっと引っ張られると、全身にぞくぞくと刺激が這い回る。
「んっ、はぁ、ぁあっ」
美冬の息が上がり、バスルームの中に響く。
徐々に官能の火を付けられる体は体温が上がり、夏だからぬるめに入れたお湯にのぼせそうだ。
ぞくぞくと震える腰に鏡哉の固くなったものが当たる。
鏡哉が興奮しているのを感じ、美冬の中心がピクリと反応した。
(欲しい、鏡哉さんの――)
口から甘い声と共に、吐息が漏れる。
「ベッド、行こうか」
耳元でそう囁かれ、美冬は恥ずかしそうにこくりと頷いた。
そばに置いていたバスタオルを巻かれ、横抱きにして鏡哉のベッドルームへと運ばれる。
ゆっくりとベッドの上に降ろされた美冬は、熱っぽい瞳で鏡哉を見上げる。
上に覆いかぶさってきた鏡哉が、しっとりと唇を重ねてきた。
何度も唇を啄ばまれ解された後、口内を丹念に舐めあげられる。
舌の裏を舐めあげられるとびくびくと体が震える。
貪る様に味わいつくされた頃には、美冬の瞳は潤みとろんとした顔になっていた。
「そんな顔、私以外に見せてはいけないよ」
男の情欲をそそるその表情に、鏡哉は苦笑してそう零す。
鏡哉から与えられる巧みな胸への愛撫に、美冬の甘い喘ぎも大きくなる。
「あぁん……んっ……ひぅん」
自分と同じだけ鏡哉に気持ち良くなってほしくて、恐る恐る鏡哉の胸元に手を伸ばす。
指先が自分のよりは小ぶりな乳首をかする。
それを潰す様にしたとき、鏡哉か美冬の胸から顔を上げた。
「美冬?」
「きもち、い?」
見下ろしてくる鏡哉に小さく首を傾げて尋ねると、鏡哉の顔がくしゃりと崩れる。
そんな表情を見たのは初めてで、美冬は思わず「かわいい」と口にしてしまった。
9歳も年下の少女にそんなことを言われ、鏡哉の顔は文字通り狐につままれたようなものになった。
さっと体を抱えられたかと思うと、体勢を逆転されていた。
美冬の小さな体を腹の上に乗せた鏡哉は、クッションを幾重にも重ねたベッドヘッドへと凭れ掛る。
鏡哉の上に跨る、その恥ずかしい体勢に美冬は慌てた。
「き、鏡哉さん?」
「美冬が気持ちよくしてくれるんだろう?」
嫣然と微笑んだ鏡哉は、少し意地悪な表情で美冬を見下ろしてくる。
(え、ええぇ〜!?)
そんな大それたことを思った覚えはないが、鏡哉はとても楽しそうだ。
意地悪のスイッチを自分はどうやら入れてしまったようだ。
美冬は鏡哉の体を見下ろす。
無駄な肉など一切ない、引き締まった美しい男の体。
恐る恐る掌で体の輪郭を辿ると、鏡哉は少しくすぐったそうにした。
鏡哉にいつもされていることをしてみよう、そう腹を括った美冬は体を起こし鏡哉の首筋に頭を埋めた。
首に片手を添えると、小さな唇でいくつもキスを降らせ、舌で舐めあげる。
鏡哉の反応はよく分からないが、美冬の背に広がっている長い黒髪をゆっくりと梳き始めた。
舌で鎖骨を辿り、少し強めに吸い付く。
適度に焼けた肌に小さな鬱血が浮き上がる。
世にいうキスマークを付けてしまったと美冬は焦るが、それに気づいた鏡哉が微笑んだ。
「浮気防止の、しるし?」
美冬がそう恥ずかしそうに上目使いに呟く。