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籠鳥 〜溺愛〜
【女性向け 官能小説】

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13章-2



 鏡哉は夜になり仕事を終わらせ、帰宅の途に就いた。

 思ったよりも時間が長引いてしまった。

 美冬のことが心配になったが、彼女のいる部屋は鏡哉の寝室で、バスルームが完備されているし、昼食にサンドイッチも置いておいたので大丈夫だろと思い直す。

 部屋の玄関を入ると当たり前だが暗闇に包まれ、しんとしていた。

 鏡哉の寝室の鍵を外から開けると、入り口の近くに美冬が崩れるように寝ていた。

 目の周りが赤く涙の跡が乾いて残っている。

 一瞬胸が痛んだが、鏡哉はそれを無視して美冬の小柄な体を抱き上げた。

 ベッドに下すと上掛けを掛けてやる。

 デスクに目を移すと、そこにはぱさぱさになったサンドイッチがそのまま残されていた。

 小さく溜息をついて皿を取り、部屋を後にする。

 ダイニングの椅子に脱いだスーツのジャケットをかけると、腕まくりをして夕食の準備に取り掛かる。

 美冬の好きなパスタを作ってやりたかったが、きっと彼女は自分で食べないだろうと、食べさせやすいリゾットにすることにした。

 テキパキと料理をしながら、気分が高揚してくる。

 美冬がこの部屋にいる、ただそれだけで鏡哉の心は満たされる。  

 もちろん心だけではなく、彼女に触れるだけですぐにその幼い体を貪りたくて仕方がなくなるのだが。

 鏡哉は26歳、今まで抱いた女の数はもう覚えていない。

 初体験でさえ小学6年生の頃だった。

 その鏡哉が高校2年生の彼女の体に溺れている。 

 その状況にくつりと自嘲気味に笑い、鏡哉は出来たリゾットとサラダをトレーに乗せて美冬の待っている寝室へと運んだ。

 美冬はいつの間にか起きていた。

 ぼんやりとした様子で天井を見つめている。

 いつものように食事の香りを嗅いだら元気になるかと思ったが、美冬の様子は変わらなかった。

 サイドテーブルに食事を置き、美冬の上半身を起こす。

 結んだままだったリボンの拘束を解いてやると、その膝の上に食事のトレーを置いた。

「リゾットだ。食べられるかい?」

 鏡哉の問いかけに、ぼんやりしていた美冬の瞳に力が宿り始める。

「……鏡哉、さん」

「うん?」

 掠れた声で自分の名を呼ぶ美冬に、水差しから水を汲み渡してやる。

 美冬は億劫そうにそれを一口飲むと口を開いた。

「もう、やめて下さい。こんなこと――」

「こんなこと?」

 問い返すと、美冬は苦しそうな表情でこちらを見つめてきた。

 赤く潤んだ瞳に見詰められるだけで、鏡哉の雄がぞくりと反応する。

「こんなこと、鏡哉さんが傷つくだけ……」

「私が?」

「鏡哉さんは、こんなことする人じゃない。私の――」

 美冬がそこで言葉を区切る。

「私のせいだって、分かってます。私が、悪いんです。私が……」

「そうだ。美冬がキスを強請ったから悪いんだ」

 鏡哉は美冬の言葉を遮ってそう言い放った。

 びくりとした美冬の瞳に涙が盛り上がり、一杯になって零れ落ちる。

「ご、ごめんなさい――」

「許さない」

 鏡哉の厳しい言葉に美冬は言葉につまり、部屋には沈黙が落ちる。

「――――き」

 沈黙を破った美冬が何かを呟くが、声がかすれて聞き取れない。

「………?」

「好き、なんです、鏡哉さんのこと――」

「………」

「好き――」

 美冬は涙を零しながら、まるで訴えるように鏡哉に呟く。

 リボンの跡が少し残った細い腕を伸ばし、鏡哉のシャツの袖を握りしめてくる。

「………」

 鏡哉は美冬の膝の上のトレーをサイドテーブルに避けると、その大きな掌で美冬の両頬を包んで自分と視線を合わせた。

 美冬の涙が掌を伝ってベッドにぱたりと零れ落ちる。  

「知っているよ、そんなこと」

「………え?」

 美冬が戸惑った表情で鏡哉を見返す。

「美冬は好きでもない相手に自分の体を開く程、器用でもないこともね」

「………」

「もちろん――」

 鏡哉は頬から手を放すと、美冬の腕を手に取り痣が残った腕にキスを落とす。

「私も君のことを好きだ――いや違うな……愛している」

「………!」

 何にそんなに驚いているのだろう、美冬は絶句し硬直していた。

「私だって愛してもいない相手をここまで抱いたりしない。っと言っても自分の気持ちに気づいたのは……そう。美冬が可愛らしく『めちゃくちゃにして』っておねだりしてくれた時だったが」

 美冬の頬がさっと朱に染まる。

「あの時までは、私は美冬の保護者として君を慈しんできたはずだよ。それを君が壊した」



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