10章-4
二人は無言でエレベーターを降り、部屋の玄関の前に立つ。
鏡哉は重厚な扉を開け、美冬に入るように促したが、美冬は首を振って立ち止まった。
「ここで高柳さんを待っています。電話をして――――きゃっ!?」
美冬は小さな叫び声を上げる。
一瞬何が起こったのか分からなかった。
鏡哉が美冬に近づいたかと思ったら、視界がグレー一色に染まり、体が宙に浮いていた。
扉がゆっくりと閉まりパタンと音がし、そこで美冬は鏡哉に担ぎ上げられたのだと悟った。
「嫌っ! 降ろしてください!!」
鏡哉のスーツの背中に両手を突っ張り、足をばたばたとさせ抵抗する。
しかし鏡哉はすたすたと部屋の中に入り、彼の部屋へと美冬を連れて行こうとする。
「いやっ!」
そこは初めて美冬と鏡哉が体を繋げた場所だった。
美冬はぞくりと恐怖を感じ声を上げるが、乱暴にベッドの上に放られた。
鏡哉が後ろ手に部屋のカギをかけるのが目に入る。
「鏡哉さん!? どうして――っ?」
美冬はベッドの上で後ずさりしながら、鏡哉を睨み付ける。
しかしそれを見返す鏡哉の瞳のほうが怒りをはらんでいおり、美冬は言葉を失う。
「私から、逃げられると思うな――」