恋の始まり-5
今から一週間前。授業で小テストが行われ、点数の低かった者は居残って補習を受けなければならない。
「はぁー、やだもぅー。」
私は今、無情にも引かれた×印が所々つけられた数学のテスト用紙に頭を悩まされていた
「これどうやって解くのよー!」
静寂に包まれる教室、窓から照らされる夕陽。
こうして補習を受ける…という事は、少なくとも成績優秀ではない、と言う証拠となる。
友達が出来ない人はその分勉強は出来る、という思い込みのある私。
……それじゃー今の私は何なんだ?友達は出来ない運動もイマイチ、で、こうしてロクに小テストも満足に出来ず一人居残り。
「……。」
せめて、せめて勉強は出来る、そうする事でダメ人間を回避しようとしていたのに。そんな私の苦しみ悲しみなどいざ知れず、目の前には腹立たしい一枚の紙切れが消えたり変形する事なくそこにあり。
自分は無能じゃない!友達は居ないけど勉強は出来る、未だ認めず諦めずこんなテスト、
ちょちょいとやっけてやる!
「えーと、これはXを…、ここは26で、あーでも。」
どう頭を捻っても、ピンと来る答えが出ない。
「あーーーーーっもうっっ!!」
怒りと絶望を爆発させるように、机の上に置いてある筆箱を払いのけ、ペンや消しゴムが勢いよく床に叩きつけられる。
もう嫌だ、何やってるのよ!私。この先に一体何が待ってるの?私はこのままずっと独りぼっちなの?勉強も出来ない運動音痴で友達ゼロ…。
夕陽の光が、ただ虚しく私の弱弱しい背中を照らしつける。
「うっ…ううっ。」
私は独り。私は…空っぽ。
「どうしたの?」
「……。」
低い声が、私の耳に入る。
「何?……もしかして補習?」
「………。」
悪かったな、けど今の私に、言い返す気力もなく。
「本当にあるんだな、点数悪くて一人で居残る奴、ハハッ♪」
何が可笑しい!?友達とつるんでる人たちは皆、家や喫茶店で皆で協力し合って知恵を絞り集め、スラスラと解いていく。
だから、私のように友達も学力もない人はただ惨めに溶けもしないテストにバカにされ、
苦しい想いをすれば良いっ!
「……。」
無人の教室に突如入って来て、何故か声を掛けてきたその少年は眉を強ばらせる。
どうせ、どうせ……私何か、私、何か……。
「そこ、Yの30…だぞ。」
「!?」
不意に答えを言い出す彼、そしてそのまま前の椅子を引っ張り、私の机の前に来る。