恋の始まり-4
「へっ!?そんなに喰う訳っ…。」
トレイから今にも零れ落ちそうな程沢山あるドーナツを見て思わず目を丸くする彼女。
誘われたものの、行き成り一度も会話した事もない人と会話をする何て…、と思ったが重く押しかかる孤独感から抜け出したい思いが自身の背中を押す事となり。
伊吹巴、黒髪のポニーテールが似合うスポーティングな少女。教室で友達に囲まれて楽しそうに笑っている姿を何処となく見かけていた。
「そっかぁー、転校生だったんだぁ、それじゃーちょっと戸惑うよねー。」
どうやら彼女も、友と群れず一人ポツンとしてる私を気にかけたそうで。
「御免なさい、気が散るよね…。」
「えっ?何でさ…。」
思わぬ腰の低さに口を開ける彼女。
「あっはっはー!そんな事ないよー、ただ気になっただけだよー、それよりさー。」
社交的でこういう勢いで色んな人に話しかけてるんだ、何だか良い人。それから私たちはそのまま会話を弾ませた。バレー部に入っており、上にお姉さんが居て、無類のラーメン好きで、休日はほとんどカップ麺だとかで。
「へぇー、実家は青果店何だ、今度行って見ようかなー、こういうのちょっと憧れてたんだよなー。ねぇ!お台場は行ったの?いやと言うかディズニーランドには行ったの?私一回も遊びに行った事ないんだよねー。」
次第に先ほどまで感じていた孤独が嘘見たいに吹き飛び、彼女への軽い警戒心も溶け。
彼女からしたら、友達と一緒にドーナツ食べよ思ったのにそれが中止となり、かと言ってこのまま自宅へ直行すれば、たまにしかない100円セールを見す見す逃す事となり、そこでたまたま出会った私に声を掛けた、私と同じ理由で。
でも!今の私からしたら無人島から奇跡的に船が通ったくらいに幸運で在り難い事。
「ねぇ!部活は何か入ってるの?」
「いや、まだ何も……。」
「進路希望、合宿、遠足に、期末テスト、学校祭。やる事は沢山あるぞ。」
「わー、大変そうー。」
「勉強に部活、それに……恋。」
「えっ?」
思わず口に運ぼうとしていたコーヒーカップの手が停止する。
「……誰か好きな人は居ないの?」
彼女の言葉に頬を赤くする。
「あれー、もしかして、ビンゴ?」
「そんな……、そんな者はいませんよ。」
「何故突然敬語?、そっかー。」
「でも、気になる事が…。」
「ん?気になる事?」