恋の始まり-3
一か月後…。
「結局、今日も出来なかった…。」
この日も友達を作ろうと声を掛けようとするも、直前で躊躇ってしまい、授業でノートを集めるとか給食で残ったデザートをどっちが貰うとかその程度のやり取りダケで。
灰色に染まった歩道に暗く視線を落とす私。
こうして行く間にも時はどんどん過ぎてゆく…、家でお店の手伝いに家事、学校ではただ勉強をするダケ。楽しい事何て一つもない。
別に苛めを受けている訳ではないし、皆から省かれている訳でもない、私が臆病だからいけないだけで。
生気を失った顔で、何の気に無しに顔を上げる、すると。
「あっ!」
それを目にした途端、反射的に顔をパァとさせる。
「ドーナツ♪」
モスタードーナツの看板だ。そう、私は無類のドーナツ好き、小さい頃から親がお土産として買ってる箱を目にすると一気に天国にでも舞い上がったような気持ちになる。
私は純粋に吸い込まれるように、その店へ近づいた。孤独とか寂しいとか関係なく。
「うわぁーー、良いー♪」
フレンチにファッション、ポンデにチョコレート、豊富に品揃えられた出来立てのドーナツ全てがキラキラに輝いている。
早速新しい土地での初モスドに心舞い上がり、イートインしようと思う。しかし私も子供ではなく、流石に一人で入るのに抵抗を覚え。
……大好きな店にすら入れない。友達が出来てれば、私に度胸があれば。
折角僅かな幸運に出会えたかと思えばこのザマ。
「えぇー、これからバイトなのぉー?うんー判ったぁー、いいのいいのっ!気にしないでうんうん、じゃーねー!」
時を同じくして、私と同じ制服を着た女の子が、携帯片手に何かを口にする。
帰ろうか?でも折角見つけたのに、かと言って一人で入るというのも…。
店の付近でそうやってウロウロしていると、そこに。
「あれ?君、ウチのクラスに居る人だよね?」
「え?」
話からして一緒にドーナツ食べよう思ってた友達が急にキャンセルして、独りぼっちになったようで。
この人も独りか…、何て妙な勘違いをしていると。
「ねぇ、良かったら一緒に中、入らない?」
「!」
予想もしない言葉、私は、私は……。