も-3
「じゃぁ・・・お願いします」
そう言った私の手を引き寄せて肩を抱いた。
「由香里って呼んでいい?」
耳元でそっとささやかれたその声が心地よくて
喉の奥で小さく返事をした。
「セックスだけの関係は嫌だな」
相変わらず耳元で話し続ける石島さんを見て
美香が苦笑いをしている。
「心がないとお互いに気持ち良くなれないと思うけどどう?」
うん。私もそう思う。
いくらセックスが上手い男でも
それだけの関係じゃ、気持ち良くなれないと思う。
「私もそう思います」
肩を抱いていた手で髪を撫で始めた。
「じゃぁ、由香里は今日から俺の彼女ね」
石島さんの彼女・・・・
大学時代、何人の女の子がこの位置を欲しがったんだろう。
「由香里は仕事は忙しい?」
「忙しいです」
「ん。俺も。平日はあんまり会えないかも」
「あ。私もです」
やりがいのある仕事は、この年齢になって段々重要な仕事を
任されるようになって、帰りも遅い。
2年前に別れた男は私の仕事へののめり具合に文句を言った。
「私、彼女らしいことはしてあげられません」
「うん。俺も同じ」
「石島さんの帰りをご飯を作って待ってるとか出来ません」
「うん。俺も記念日は覚えてられない」