逢瀬〜愛撫のとき-2
ボナールマンションに帰ってきた。渡部紀夫は、部屋に三原レイを招き入れた。リビングはフローリング張りで、となりのダイニングキッチンとを仕切るドアはない。オープンにしてあることで、開放的な空間になっていた。
レイは、ベージュのダッフルコートを脱いでいた。紀夫は受け取ってハンガーに掛けた。
「ありがとう」
「歩いてきたら、喉が渇いた。伊東園の野菜ジュースでも飲むか?」
紀夫は冷蔵庫のほうに歩きかけた。
「私、やります。座っててください」
三原レイの声は高音域が伸びやかで、なおかつ、艶(つや)がある。
「ありがとう。グラスはそこに入ってるよ」
「はい」
バロック調のグラス収納棚は高さ80センチほど。コーヒーカップやグラス類だけを入れている。レイは屈んで、棚の扉を開けた。紀夫は、レイの後ろ姿を見つめた。細身に黒のニットが似合っている。ピンク色の台形スカート、いや、Aラインスカートだ。ミニ丈でひざ上20センチくらいか。ミニスカートから伸びた脚はグレーのストッキングに包まれていて、少し透けている。
(綺麗な脚だ……)
紀夫は、Aラインスカートの中を覗きたい衝動に駆られた。
「渡部さん、どうしたんですか?」
「いや、なんでもない……」
レイは、ピンクローズと黒猫が描かれたタンブラーをテーブルの上に置いた。
「顔、赤いですよ」
「酔いがまわってきたかなあ?」
「一杯しか飲んでないのにですか?」
レイは、冷蔵庫を開けて、伊東園の野菜ジュースを取り出した。グラスに注ぐ。紀夫はレイにそっと近づいた。レイは野菜ジュースのペットボトルを右手で持った。紀夫はさっと、レイの右手首を掴む。
「渡部さん……」
「ジュースは冷蔵庫に入れなくていい。残り少ない……。後から全部飲むよ」
「えっ?」
「レイちゃん、キスしよう……」
見つめた。
一点の曇りもない、少女のつぶらな瞳に、潤みが浮かんだ。鼻骨がある鼻根から顎にかけてのラインが、あどけない子どものようだ。口紅をつけていないくちびるは、たよりなさげだが、朱さ(あかさ)が際立ち、少し濡れているように見えた。
レイの右手から力が抜けた。紀夫は、手首を掴んでいた手を離した。
「正面を向いて」
言葉は返ってこなかったが、レイは伏し目がちになりながも紀夫と向き合った。
がっしりと少女を抱きしめた。小さめだけど、ロケットのような乳房の記憶が蘇る。紀夫は、抱きしめながら、くちびるを三原レイの頬に這わせた。透きとおるような頬。壊れてしまうのではないかと錯覚してしまう頬だ。
「綺麗な肌をしている……。ふだん、化粧してるの?」
耳元で囁いた。
「BBクリームだけはつけてます……」
小さな声だが、可愛い。
くちびるを重ねた。柔らかくて溶けていきそうだと感じたが、強く吸っていると、柔らかさの中にある、ぽわーんとした弾みも伝わってきた。
紀夫は、少女のくちびるから離れた。レイは目を閉じてじっとしていた。頬にほんのりと赤みが差している。
「レイちゃんも、吸っていいんだよ」
「………」
ぎゅっと抱きしめて、ふたたび、キスをした。少女のくちびるを貪るように吸った。強く吸っていると、レイも少しだけ吸い返してきた。吸い返しながら、からだはふるえていた。
紀夫は、舌で、少女のくちびるを割ろうとした。レイは、鼻腔から吐息をわずかに洩らしながら、くちびるを固く結んで、舌の侵入を拒もうとした。
口を大きく開けて、押しつけながら、舌を唾液まみれにして、少女の幼い(いとけない)くちびるを割った。
「ぁ、ぁぁン」
愛らしく感じる小さな鼻から吐息が洩れた。紀夫の背中を抱いていた手のひらに力が込められた。ぎゅっと――。