虹美ヶ丘の家-3
「うふふ、そんなに褒めても何にも出ないんだから。でも嬉しい。みんな、今日は来てくれてありがとう」
あらゆる賞賛の言葉を浴びながら、美穂は学生の頃から変わらないつるりとした陶器のような頬をバラ色に染めて照れたように笑った。
パーティー用にアップスタイルにした髪形もよく似合い、丈の長い白いドレスの裾を揺らしながら歩く姿は、大げさでなく女神のように見えた。
思わず、見惚れてしまいそうになる。
テーブルの上にバイキング形式で並べられた料理も、美穂がすべて手作りしたものだという。
他のふたりと比べて会話も格段に上手で、品の良いジョークで場をなごませ、人を退屈させることが無い。
……本当に欠点のない人間も、世の中には存在するのね。
わたしはそんなことを考えながら、もう何度目になるのかわからないため息をついた。
リリリ、と部屋に備え付けられた電話が鳴った。
白を基調として金色の細工が施された電話は、それだけでも芸術品のように見える。
ちょっと失礼するわね、と受話器をとった美穂は小声で電話の向こう側にいる相手とやりとりし、困ったように肩をすくめて通話を終えた。
「ごめんなさいね、お庭の手入れをする業者さんが来ちゃったみたいなの。本当はもう少し後で来るはずだったんだけど……少し抜けさせてもらってもいいかしら?」
申し訳なさそうに言う美穂に、茜と由紀は微笑みを深くしてうなずいた。
「いいわよ、でもお料理全部食べちゃうかもしれないけど」
「そうそう、美穂が美味しく作り過ぎたのがいけないのよ……なんてね。ふふ、わたしたちのことは気にしないで」
「そう言ってもらえると助かるわ。どうぞゆっくりしていってね、お酒もお料理も好きなだけ楽しんで」
美穂が慌ただしく部屋を出ていく。
その足音が聞こえなくなったのを確かめてから、茜と由紀は閉じられたドアに向かって手に持っていたワイングラスを思いきり投げつけた。